昨日、軽井沢町で行なわれた田中優さんのお話し会に行ってきました。
テーマは「こどもたちのためにできること」。
内容は、内部被爆を極力抑えるための食べ物のこと、原発を支える仕組みのこと、そしてこれからの自然エネルギーの可能性について、です。
そこで伺ったことのなかから、今日は「食べものについて」の部分を、備忘録も兼ねて、ここに残しておきます。
そもそもなぜ脱原発なのか、今後のエネルギーシフトについての提言も、目からウロコの興味深いお話がたくさんあったのですが、長くなってしまうので機をあらためて。
田中優さんの紹介・活動については[
こちら]をご覧ください。
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まず、驚いてしまったのは「野菜はほぼだいじょうぶ!」という言葉。
え!?と思ってしまいますが、理由はこういうこと。
放射性物質の中で気を付けなくてはならないのは、半減期も長いセシウムですが、このセシウムは大気中の水と反応しやすく、一度そこで反応するともう水とは反応しません。
セシウムの最大の特徴は、ホコリやチリ、粘土と強く結びつくところ。セシウムはホコリと一緒に降ってきて、土の表面に付着しますが、粘土と反応すると野菜の根っこくらいには引き出されない。地中で、下向きに伸びる野菜の根っこには影響が少ないのだそうです。
実際に、今、野菜類からはほとんど検出されていないのだそう。
お芋など根菜類の一部からは検出はあっても、皮を剥いて洗って茹でて食べる時点では気にするレベルではない。
(ただこれは逆を言えば、塵やホコリが溜まりやすいところ、雨水などと共に流れていく先の場所では、汚染がひどくなるとも言えます。)
では、逆に注意しなければいけない食べものは?
*生体濃縮される肉・卵・魚・牛乳:
特に魚は日毎に濃縮が進んでいるため要注意。危険度は、淡水魚>海の底の魚>海の表面の魚の順。
淡水魚は、セシウムが溜まる川底の苔や藻などを食べるため。海の魚は、海流が太平洋沖へと流れていくため、福島・茨城沖のものだけ避ければよい。
お肉はおもに牛肉のこと。鶏や豚はほとんど気にしなくて良い。牛乳は、回収時のホースなどに付いていたり、混ぜ合わさってしまうため、判断が難しい。
*キノコ...特にシイタケ、ナメコ
*来春のタケノコ:葉の固い竹・笹・稲などはセシウムを集めやすい。
*今年の果物...梨・柿・リンゴ・栗・ウメ。来年以降は減っていく。
*米の胚芽・麦の麦芽:ただしお米についても、白米にして炊いてしまえばほぼ問題ないレベルに下がる。籾殻の状態で測っているから高く検出される。
このほか、気になる場合は、茹でこぼす、お酢で浸ける(セシウムは酢に出やすい)。
ポイントは「にわかベジタリアン」になること!
もうひとつ、食べ物について重要なのは、避けるばかりではなく、免疫力を高くするもの=「抗酸化物質」を摂ること。
*緑黄色野菜...できれば有機で健康的に育てられたもの
*乳酸菌:漬け物やキムチなど
*麦芽:ビールも!
*熟成の進んだお味噌
つまりは、日本の伝統的食べ物&食べ方が良いということ。
そして、免疫力を高めるためにもっとも大事なことは.....
『前向きに、ごきげんに生きること!』
なあにそれ、と眉唾に思う方もいるかもしれませんが、私はいちばんココにグッときちゃいました。
あれもダメ、これもダメ、もう絶望的...となってしまっては、免疫力も低下して、体も心も同時にやられてしまいます。
日本人が昔から大切にしてきた「医食同源」の考え方。少し前から見直されてきている流れもあるけれど、放射性物質に対しても例外ではないのですね。
これを機に、食生活を見直すことにも繋がれば、絶望的なことばかりではないのかもしれません。
それともうひとつ。田中さんが強調されていたのは、食べ物を選ぶ際にしろ、生き方を選択する場合でも、とにかく「自分を信じる!」。
今、私たちが置かれているこの状況を、すべて把握して助言をくれる専門家も医師も、残念ながらいないのです。
専門家や医師は、ある提言があった時にはそれを「根拠がない」「信憑性がない」と、否定はする。
たとえば事故直後、ヨウ素を体に取り入れないために海草を食べさせようという話があったときも、すぐに否定をされた。でも後になってから、食べさせておいたほうがよかった、と認めた。
マスクについても、あんなものは意味がないと言い放った教授もいたけれど、つい先頃になって、東大で調べたデータから「マスクをしていれば爆発直後の呼吸からの被爆はほぼ100%防げた」という結果も出た。
だから、自分の中でこうしたらよいのでは、と思ったことについては、自分を信じる。
そのことも、前述の「前向きに」というところにも繋がるのでは、と思います。
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一方では、情報が錯綜し、氾濫して、何を信じたらよいのかわからなくなってしまう。
一方では、ネットなどに触れる機会がなければ、テレビで見た首相の「事故収束宣言」を信じて、終ったんだねと思っている人もいるかもしれない。
そのどちらもが不幸なことです。
私自身はどちらかといえば前者で、答えの見えない闇のなかで悶々としてみたり、時々は回路を閉じて別世界で遊んでしまおうとしてみたり、おそらく同世代の多くの人と同じところを、いったりきたりしているのではないかと思います。
幸か不幸か、今の時点で子どもがいないため、そのぶん緊迫感は薄いだろうとも思いますが、だからといって身の回りの子どもたちの未来がまったくの他人事とは思えません。
同時に、小規模ながら飲食店をしている立場、また、夏場は野菜の生産者に近く接している立場として、「売るな!」「買うな!」のシュプレヒコールにも、単純に一緒に拳を上げられない迷いや戸惑いもあります。
だもので、今回聞いたお話には、スッと心が軽くなりました。
もちろん、この内容についての賛否両論もあるでしょう。
でも、そこで、例の、あれ、です。
自分を信じる。
これからもゆらゆらすることはあるだろうけれど、その時その時の、自分を信じる。
そしていつも、なるべく、朗らかに、ご機嫌でいること!
ものすごく偏ったことを言ってしまうと、眉間に皺を寄せながら、汚染されていない食品を箸でとりわけとりわけムッツリぼそぼそと食べる食事が、はたして本当に「体に良いこと」なのかなぁ...と思ったりもしてしまいます。
断るまでもないですが、ご機嫌でいること=何にもお構いなしに開き直ること、ではありません。
自分で注意すべきことは注意する。注意をし過ぎるということもないのです。
なにしろ、答え合わせもない。正解を(今は)誰も教えてくれないのですから。
ただ、自分で選ぶことのできない子どもたちには、最大限の配慮をしてあげなくてはいけないのは、大人の責任だと思います。
あぁ。それでもやっぱり、書きながらもグルグルぐるぐる。
きっぱりと、お話会で聞いたことだけ記録しておこうと思ったのに、余計な私見を入れてしまったのがいけませんね。
でも、このグルグルも今のわたしだということで、そのまま記しておこうと思います。
(ほんとを言えば田中優さんの本領は、これからのエネルギーのあり方や、原発に頼らない社会のあり方への提言のところだと思うので、お話会の後半部についてもあらためてぜひ触れておきたいと思っています。)
(どんなひと?と興味を持たれた方には、下記の本もお薦めします。)