一年のうちで、今、この瞬間の森が、いちばん好き。


気づけば色付きは一気にクライマックスへ。
深紅のモミジも美しいけれど、緑から黄色・茶へと向かうこのグラデーションが、なんともこの場所らしいと思う。
上を向いても、下を向いても、遠くの林を見ても、きれい。
ここのところ、きれいなものは何故きれいなのか、書く時に単に「きれい」という言葉だけで終わらせないようにしよう、というのを自分への課題にしたばかりなのに、この風景を前にしては、やっぱり「きれいだなー」としか言えない。
自然は人の手の及ばないところにあるんだから仕方ないのだ、と開き直る。
でもあえて言葉を捏ねくるとしたら、この光景がこんなにきれいに映るのは、この鮮やかさの後には一切の色のない世界が待っていることを、もう頭のどこかが憶えちゃっているからかもしれない。
年々、この時期の美しさにキュッとなる度合いが強くなるような気がする。
山に白いものが降りるのも、きっともうすぐ。
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昨夜、教育テレビで須賀敦子さんの特集を見た。
60年余り、悩んで、悩んで、体当たりして、苦しんで、葛藤して、また悩んで、そうしてあの美しい文章は絞り出されたんだと知った。
また全部読み返してみたくなる。
須賀さんの本のたたずまいからは、冬の始まりの匂いがする。
だから、読みたくなるのは、いつもこの時期。
煙突から立ちのぼる煙を、一段と身近に、親密に感じるようになる、この時期。
