近頃めっきり本を読む時間が減りました。
イソガシクッテ...なんていうのは言い訳でしかないけれど、
こちらに暮らすようになって、木漏れ日のデッキでさぞかし充実した読書タイムが持てるだろうなんて思っていたら、とんでもない。
やるべきことに追われるうちに、日々が過ぎ、季節が過ぎ...、本を読む時間はどうしても後回し。
トイレの中の数分が、一日の唯一の読書時間なんてこともあります。
(実際、我が家のトイレにはミニ本棚があり、今は村上春樹の『カンガルー日和』が置いてあります。村上春樹の初期の頃の短編ほど、トイレ読書に最適なものはないように思うのですが、いかがでしょう?)
ですが、本を読むゆとりもない暮らしなんて、いくら自然に囲まれていたって、豊かな生活とはいえません。
これではいけない、という自戒の念を込め、これからはちょくちょく「読書日記」をつけたいと思います。
(そもそも、このブログは、そういうことをしたくて始めたはずなのに、いつのまにか、一部からのご指摘もあるように、食べ物などのことばかりで...
開設2ヶ月を機に、初心に立ち返るべし、なのです。)
ということで、早速、(数少ないですが)今月読んだものもの.....
●「いまなぜ青山二郎なのか」白州正子著(新潮文庫)
手には取るけれど、なかなか買うまでには至らない、という本があります。私にとって、この本がそうでした。最近、またパラパラっと書店で開いてみていたら、冒頭のあるくだりが興味を引きました。そこには、この本を白州さんに書いてもらいたいがため、新潮社の女性編集者は毎夏、チーズケーキを手土産に、軽井沢の白州さんの別荘を訪ねたそうです。断り続けた白州さんですが、その訪問も5〜6年目になり、とうとう編集者が「もう会社も辞めるのです」という一言で、とうとう根負け。ようやくカタチになりました。話の本筋とは逸れますが、ひとつの本を作るための執念ともいうべき“編集者魂”。そうまでして“書かれなければならなかった”青山二郎という男。愛弟子として、彼をジィちゃんと呼び慕い続けた白州さんの卓越した語り口。それらが相まったこの作品、独特の骨董の世界や文学界の相関図を知らずとも、十分に楽しめる評伝です。
●「問いつめられたパパとママの本」伊丹十三著(新潮文庫)
この春の私の収穫のひとつが、この伊丹十三との出会い、いえ再会、です。前にちらりと紹介した「女たちよ!」も含め、両親の書棚にはずっと以前から単行本があったので、学生の頃流し読みしたけれど、その時には面白みが解りませんでした。ここのところの復刊ブームで再会を果たした訳ですが、今の時代の人にはあまり見られない「口だけではないダンディズムに裏打ちされた嫌みの無い毒舌」っぷりに、ヤラレました。どうやら「随筆」を「エッセイ」に変えたのが、この伊丹氏だということですが、さらりと書いているようで、生半可なセンスと知識で真似をしようったって、こうは書けないだろうなということは明白です。
●「だりや荘」井上荒野著(文藝春秋)
半分は意識的に、残りの半分は無意識かつ無邪気に、関わりある女たちを苦しめ翻弄させる“困った君”を書かせたら、この作者に勝る人はいないでしょう。前作の『潤一』もそうでしたが、今回も姉妹それぞれを同等に愛して、それぞれに愛されている現状に満足し疑問すら抱かないオトコを巡る少し哀しい物語。フトドキモノの一言で片付けられれば簡単だけど、そうもいかないのがレンアイ、なのでしょうか...?
●「袋小路の男」絲山秋子(講談社)
このひと、初めて読みましたが、なんとも言えない感じ...。読み終わった後に残るものはないけれど、読んでいる間は引込まれました。
●「遍歴」神谷美恵子コレクション(みすず書房)
精神科医であり、作家であり、ハンセン病患者のためにも身を呈した作家が、亡くなる間際に残した自らの軌跡を綴った1冊。10代の頃から自分に課せられた命の意味を問いながら、常にもっと学び、もっと人のために役立ちたいと闘い続けたその精神力には、ただただ頭が下がるばかり。このような有能な人でさえ、結婚し、家庭を持った時には、ご主人の研究を優先させ、自分自身の勉強や仕事は一時断念していたそう。時代は違いますが、一人の女性が生きる、ということについて、あらためて考えさせられる機会となりました。これまで難しいようで敬遠してきた彼女の著書も紐といてみたいと思います。

じゃーん!ここでニャンともかわいいビジュアル本の紹介!
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「ヨーロッパを旅してしまった猫のはなし」平松謙三著(ブルースインターアクションズ)
真っ黒猫のノロが、飼い主夫婦のヨーロッパ旅行に付いていっちゃう(無理矢理連れられてった...かな)旅の様子が、雰囲気ある写真とともに語られています。
「魔女の宅急便」のジジさながら、ご主人様の肩に乗っかって、エッフェル塔を見上げちゃってるノロ!ん〜、うちの麦も連れていきたいっ、けど、こんなお利口にしてられるかどうか...。なにしろ、普段の相方さんの教育が甘いもんだから。

雑誌は相かわらずよく買います。
今月おもしろかったのは「みづえ」と「自休自足」。「自休自足」には、ヤギの飼い方が紹介されています!