今年も悩ましい季節がやってきました。
しばらく風邪を抱え込み、引きこもっていた先週の初め。
ようやく外の空気でも吸わなくては、と、百々の散歩に出かけてみると、その数日前まで見かけなかったものが突然あるわあるわ、そこかしこにゴロゴロと…。
その正体は、「栗」。我が家の周辺に多いのは、山栗といわれる小さなもの。
そういえば、まだ暑さの残る頃から、今年はたわわに実がなっているのを見ていたのですが、どうやら今年はその暑さのおかげか、豊作の様子。
あちらの木からもこちらの木からも、ざくざくと落下しています。
これだけ落ちていると、やはりついつい気になって、どれ、と拾ってみたくなるもの。
散歩の間も、がんがん進もうとする百々を引き止めて、ひとつ、ふたつと拾い上げてはポケットへ。
ちなみに百々は、栗よりもドングリが好物。ぱくぱくくわえてはガリッ、ガリッといい音をさせて噛み砕きます。
私は栗へ。百々はドングリへ。それぞれが地面を睨みつけての引っ張り合い。(今年はドングリも豊作です。)
いつもの散歩コースを一巡りするころには、ポケットは小さな栗たちでぱんぱん。
翌日からはビニール袋を片手に、すっかり栗狩りモード100%!
それだけ読めば、あら栗拾い、秋の森らしくて素敵じゃない、と言われそうなのですが…。
実は、手は次から次へと拾いつつも、私の気持ちは「あぁ、拾うつもりなんかじゃなかったのに・・・」と暗澹としているのです。
その暗い気持ちはどこからくるのか。
その答えは、拾い集めてきた栗が、大きなザルいっぱいの量に達したとき、明確なものになります。
拾った栗はどうするか。もちろん、灰汁抜きをして、茹でて、皮をむいて、食べます。
そう、茹でて、むかなくては食べられないのが栗…。
栗の皮を剥く。この作業が、天津などの大粒のものと違って、小さな山栗の場合、ほんとうに一苦労なのです。
経験上、それは痛いほどわかっていて…。
そうはいっても、拾ってしまったものは、きちんと味わわなければバチが当たります。
金曜日の夜、一晩水につけておいたものを、土曜日の朝にたっぷりのお湯で茹でました。
そして、カフェのお客さんがひと段落した隙をねらって、鋏と小さなスプーンを手に、いざ!と取りかかります。
個人的に、渋皮煮などより、ペーストのようにして食べるのが好きなため、きれいな形にすることにはこだわらず、半割りにして、スプーンでざっくりと掬い取ります。
鋏で割って、スプーンに持ち替えて、掬う。ひたすらこの作業の繰り返し。
あら、久しぶりにやったら楽しいじゃん!と思えるのは、最初の、中でも粒の大きめのものをやっつけている頃のこと。
徐々に、鋏で割るのも難しいサイズになり、掬おうにもスプーンが入らない。
指には赤いタコができはじめ、目もしょぼしょぼに。
半分もいかない頃に、文字どおりいったん「匙をなげ」、しばらく放置。
残された栗たちは、キッチンの隅で小さく身を寄せ合い、沈黙しています。
夜になって、このまま置いておいては悪くなってしまう、「エイッ」と、自分に渇を入れなおし、再び作業開始。
30分ほど集中し、なんとか一山剥き終えることができました。
指も、腕も、肩もゴリゴリ…。その割には、中身の量だけ見るとたいしたこともなくて、泣きそうになります。
でもここまでくれば、あとはお砂糖と水を加えて煮詰めれば、大好物の栗ペーストの完成。
心なしか、いつもの年より黄味の濃い、こっくりと美味しそうな色と艶に仕上がりました。
しかし、なかなかどうして、秋の味覚を味わうのは、そうたやすいことではありません。
さあ、これで秋のひと仕事が終わり。
あとは、心安らかに、散歩をしながらも顔を上げて美しい秋の風景を楽しもう。
そう思っていた矢先に、この週末の台風到来。
嵐のさなかも、ごつん、ごろん、と栗やドングリが、爆弾のように屋根に飛来する音は聞こえていましたが、一夜明けて、案の定・・・、そこかしこに、これ見よがしに転がる大量のイガ坊主たちの姿が!!
ジーザス!
・・・いえ。別にね。見過ごして歩けばいいだけの話なのです。
私だけでない、他の誰かが嬉しく拾ってくれるかもしれません。
それはよくわかっているのです。
なのに、これはどういう心持ちの為せる仕業なのでしょう。
どうしても、転がる栗を見過ごすことが、拾わずに歩くことが、私にはできないのです!!
そもそも、栗は、“絶対食べずにいられないほどの好物”というわけでもないのです。
ペーストのものやモンブランなどのお菓子は好きですけれど、まるまんまの天津甘栗などを買って食べたりすることも、栗ご飯に執着することもありません。
それなのに、道端に落ちた小さな山栗を拾わずにはいられない。
これは単なる性格の卑しさが原因なのか、それとも遺伝子のなかに、遠い昔、木の実でお腹を満たしていたころの記憶でも焼きついているのでしょうか。
ほんとうに自分でも不思議でなりません。
そして、毎秋のように、この時期、拾うべきか拾わぬべきか、悶々と悩ましい思いを抱え続けて過ごすことになるのです。
・・・・・。
すみません。長々と、個人的などうでもよいことを書いてしまいました。
でも、なんだかこういうことも、たまにはいいですかね。
最近は、お店の告知のようなことばかりになってしまっていましたから。
(先日、なにげなく過去のブログをちらほら開いてみたら、季節ごとに色々なネタを拾い上げていたことに、我ながら驚いてしまいました!
そんな気持ちは忘れてはいけないな、と思ってみたり。。)
と、書いているそばから、しっかり告知もさせていただきますっ。
今日から10月。「ブックニック」のスタートまで2週間となりました。
ちょこちょこと「お知らせ」など更新をしておりますので、
特設サイトをぜひご覧ください。
これからイベント会期までは、ほぼ頭がそちらに傾きっぱなしになるだろうと思います。
ますます日常ネタが少なくなってしまうかもしれませんが、そんなこんなが今年の私たちの10月の日常、ということでお許しいただきつつ、同時に、10月の北軽井沢の美しさは、このブログ上ではなく、ぜひ「ブックニック」にあわせて訪ねていただき、ご自身で感じていただけたら幸いです!