暖かくなると同時に、身辺も慌ただしく。
「春先のずーーっと先のこと」と思っていたイベントが、あっという間に目前にやってきて、そして通り過ぎていってしまいました。
3月30日の「さかさま小路の春奏会」。
遊びに来ていただいたみなさま、ありがとうございました。
momo椿*の演奏会を身近で開きたい、というぽそりとしたつぶやきを、すもの食堂の金井さんに拾っていただき、せっかくなら美味しいモノや古本も交えてお祭りとしてやろうやろう、というところからスタートしたお話。
勢い任せと言ってしまえばそうなのですが、その流れが無理矢理ではなく、春に向けて動き出したい気持ちと重なって、準備中もわくわくしっぱなし。
そして当日、花曇りの肌寒い一日となってしまいましたが、会場のMOTOKONYAには、終日穏やかな心地よい時間が流れました。
Gram lumpの量り売りのお菓子やさんのまわりには、秤に乗せる時間も待ちきれないちびっこたちの歓声が。(お菓子はお昼過ぎには完売しました。)
活動を始めたばかりというグラムランプの金子さんですが、早くもリピートされるファンが大勢いました。
すもの食堂のスープやドリンク(ソーダ用に用意されたレモンやキウイのシロップはホットでもおいしく)を片手に談笑するいつものお仲間に、初めましてのお客さんも。
金井さん夫妻はいつも笑顔の人に囲まれているような気がします。きっと美味しそうな匂いがおふたりからも漂っているからかも!
キジブックスの古本も、それぞれ新たな持ち主となってくれる方のところへ引き取られていきました。
カウンターに向かって、みんなが立ち飲みのお店のように並んで本を捲っている光景は、それはそれは幸せな眺めで、後ろでにやにやしながら、足でステップを踏んでいました。
そして。はるばる東京から、アコーディオンとギターを背負ってやってきてくれた、momo椿*のannieさんとmauさん。
お昼の会は、お子様連れの方も多かったので、お座敷ステージで。
遠くから2台のアコーディオンの音が少しずつ近づいてきたときは、村のお祭りに旅する楽団がやってきてくれたかのようで、胸の鼓動が高まりました。
素敵な木枠に収められた型染めの紙芝居には、子供たちもかぶりつき。
アコーディオンの音色と、mauさんの澄んだ美しい声が、型染めのグリム童話の世界にぴったりで、いつまでも眺めていたいようでした。
夕方の会が始まる5分前。annieさんがぽつりと、2階の部屋の響きがすごくよくて、と。
そうと聞いたら動かずにはいられません。みんなでステージを2階へと大移動。(このときの金井隊長の決断の早さといったら!)
即席で作った会場は、飾りも何もない真っ白な箱にキャンドルのみ。椅子もばらばら。照明はなく、磨りガラス越しの淡い外灯の光のみ。
けれど、これが大正解。
ちいさな囁きのようなギターのつまびきや、アコーディオンの震えるような微かな音までが、洩らさず箱のなかに漂って、聴く人の頭上に残り続けます。
この部屋だけが、切り取られて、夕暮れの空にゆらゆら浮き上がっていくような。
波のように、迫ってはひいていく、音。
後半おこなわれた「空がレースにみえるとき」の朗読劇は、今回のために作ってくれた初めてのプログラムだったそうですが、まさにこの時間、この場所、ここに居合わせた人々のためにあったもののよう。
音とコトバの向こうに風景が見える、という体験を、初めて身体で味わった気がします。
鉛筆と絵具がなくても、音で絵を描くことができる。
momo椿*は、絵描き屋さんなのでした。
そしてこの感覚は、きっとライブでなければ伝わりきれない。
これからCDをお店でも販売しますが、できれば生演奏会の場に足を運んでほしいと思います。
(直近では
こんな機会もあります。)
最後に、会場として使わせて頂いたMOTOKONYAへも感謝の気持ちを。
ここは不思議な場所です。
引き寄せられるような磁力と、そのまま腰を下ろしたくなる居心地のよさ。
きっと、染物屋さんとしての当時から、風通しのよいお店だったのではないでしょうか。
今回、お飾りとして、納戸に仕舞われたままの反物を2階の窓から吊るしてみました。
それを見た通りすがりのおばあさんが、「あら、ここまた始めたの?」と足を止めてくれたりして。
「昔はここで着物を作ってもらったのよ」。そんなやりとりができたのも、嬉しい一コマでした。
町民ではない私たちのことも、懐ひろく受け容れてもらって、ありがたいことです。(もちろん金井さんの尽力のおかげもあります。)
自分にとって居心地の良い場所は、自分で作っていけばいいのだなぁ、と、この場所に滞在しながらぼんやりと考えていました。
こうした開かれた場所がある高崎の町が、羨ましいです。
私たちもいずれまた、別の形でお邪魔したいです。
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イベントから遡ること1週間前。
3月23日は、私たちの移住9周年(結婚8周年)の記念日でした。
毎年、長い冬が開けてこの日がくると、自然と気持ちもあらたまります。
まだまだ太い根が張れるというところまではいけていないけれど、多少の雨風には負けないくらいの足場はできてきたでしょうか。
お店のカレンダーもようやく更新しました。
今年は、4月20日(土)よりのスタートです。