あけましておめでとうございます。
2014年の始まり。
「4」という数字になにか親しみがあるなと思ったら、東京からこちらにきたのが2004年の3月。
もうふた月で、丸10年が経つことになります。
早かったのか、長かったのか、振り返ってみてもまだうまく測ることができませんが、人生の1/4をここで過ごしたのかと思うと、それなりの重みも感じます。
地元のおじちゃんたちからは「(よそから来て)10年もいりゃあたいしたもんだ」と言われます。
たしかに、入れ替わりの激しい土地柄。Uターン組は別として、私たちのように“ふらりと移り住んだ組”の中には、3年や5年をひとつの区切りにして、離れていってしまった友人知人も多く...。
私たちの場合、家族や仕事の事情で、たまたま幸運にも離れずに済んだということもありますが、やっぱりなによりこの場所が好きで、その好きという思いは年々強くなっていきます。
暮らす土地との関係性みたいなものは、結婚生活にも似て(?)、どんどん変化していくものです。
始まりの1〜2年は、見るものすべてが新鮮でキラキラして、特別なものに見えて。
そのうち5、6年もたてば、物珍しさが消えて、粗や影の部分にも気がつきます。(憧れや理想ばかりが高いと、このへんでがっかりしてしまうのかも...。)
日常に惰性も加わりながらそれでもやり繰りしていくうちに、不思議とまた、ハッとする驚きやおかしみのようなものが湧いてきます。
その驚きは、最初の頃の訳もわからない生まれたてのものとは違って、もう少し物陰にひそんだところや、逆に毎日見慣れて当然知っているべきところからひょっこり顔を出したりするので、そのあとの可笑しさや嬉しさもまた、初めとは違うもうちょっとしみじみした感情になって体の中に残ります。
それがちょうど、この10年前後のことのような気がします。
今年初めに読んだ本には、こんな一節がありました。
どこに住んでいるにしても、私たちの暮している場所の近くには何かしら心をひくものが存在するはずだと思う。
郷土文化ということを論じる人たちは、すぐにむずかしい議論に走るようだけれども、文化ということは__少なくとも生活文化ということは__日常生活が愉快に、能率高く、ゆたかな内容をたたえて営まれていくことである。
それが自分一人、あるいは自分の家族だけでなく、隣近所の家々、さらにそれをひろめて郷土全体の文化を高めて、日常を生きがいあるものにする方向へ積極的に努力するのが郷土文化運動である。
(中略)
美を発見し、それを愛し、喜び、たたえることのできる感受性というものは文化人の資質の一つであることを忘れてはならない。
しかもその美は決してりっぱなものや遥かなるかなたに求めるべきではなく、毎日暮している身ぢかなところにいくらでも見出せるのである。
(随筆集『心の窓から』より「身ぢかにある美しさ」/村岡花子)
翻訳家・村岡花子さんが、友人の歌人・渡辺とみ子の歌や、大詩人ワーズワースの詩を挙げながら、日常の平凡な美を題材にした作品の尊さや、また、つつましい美に対しても鋭い感受性を持って郷土の文化を知ろうとすることの大切さを綴った一文です。
たかだか10年暮らしたくらいで、この場所を「郷土」と呼ぶのはまだおこがましいかもしれませんが、ならば「今、日々、暮らしているところ」と置き換えた上で__。
10年の節目となるこの一年は、もう一度「身ぢかにある美しさ」に目を向けていく年にしたいと思います。
浅間山麓は、ほんとうに豊かで美しいところです。
これまでも、お店を開くこと、イベントをすること、小冊子を作ること、このブログで記録することなどを通じて、その美しさの一端が伝わればいいなあと思ってきました。
でもそれはまだどこか、観光に来た人がキャッキャとシャッターを押していくのに近い、ふわふわと、吹いたら飛んでしまいそうな軽さがありました。(それはそれで良かったのだと思っていますが。)
これから先の10年では、見た目の華やかさや、瞬間的な楽しさだけではない、この土地にじっとつつましく潜んでいる美しさや物語に目を凝らして、それを何かのかたちで伝えていく役割を果たせたら、と思っています。
それも、どこまでも響く大きな声ではなく、焚き火を囲む人たちが言葉を交わすくらいの静かなトーンで。
それが、この豊かな土地に住まわせてもらっていることへの自分にできるお返しなのではないかと。
新年の挨拶ということで、ちょっとカッコつけたことを書いてしまいましたが、「この先10年」という長め(甘め)の期限を設定したお話なので、まあ気張らずに、ゆるりとスタートしたいと思います!(結局はいつもどおりのマイペース...)
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そんなことを書いてるそばから、わたしは年またぎのしつこい“ゆる風邪”(熱はないのに鼻と咳がとまらない)、相方はギックリ腰...な、哀れなお正月。
初詣では、なにはともあれ「健康第一」をお祈りしてきました。
今年も一年、どうぞよろしくお願い致します!

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