数日居座った、嵐のような雨と冷たい空気がようやく抜けて、穏やかな気候が戻りました。
雲が晴れ、お日様が覗くと、若葉がいっそう青々と光って見えます。
今週末で、お店を再開してから1ヶ月。
オープン時、晩秋と変わらない寂しさだったあたりの景色も、だいぶ賑やかになってきました。

花壇の園芸種では、サクラソウ、山吹、しゃくなげ、ムスカリ。
自生のものでは、終盤のスミレに、毎年たくさん咲く黄色い小花。(キジムシロかな...、黄色い花は似たようなものが多くていつもはっきりわからないのです。)
そして、頭上には、樹花でもっとも好きと言ってよいコナシ(ズミ)の白い花がたわわに。
桜やリンゴに似た花びらの形をしていますが、桜よりも一つの枝にみっしりと花をつけ、蕾は赤に近いピンク色。遠くから見ると、木全体が白いレースをまとったように見えます。
この場所では、桜が咲いてもまだ雪や霜の心配もあって諸手をあげて喜べない分、このコナシが咲いてくれてようやく、グリーンシーズンの到来を心から祝えるような気がします。(その頃、もう平地ではとっくに初夏に入っているのですが。)
コナシの咲き出す数日前から、カッコウの声が聞こえ始め、浅間の山腹に残っていた雪もあと残りほんのわずか見られるくらい。
どちらを向いても、緑、緑。瞬きするのも惜しいほどの美しい毎日です。
花の季節を待ちきれずに、オープンと同時に設けた花と植物の古本と雑貨の展示「小舎びらき、花々と。」。
おかげさまで好評のうちに、来週末までの開催となりました。

スミレにスズランなど、今の季節の庭の花たちをそのまま紙の上に焼き付けたような、愛らしいカード類を作っていらっしゃるのは、「
botaniko press」さん。
手触りはもちろん、一枚一枚、活版を使って手刷りをされているので、少しずつ柄の位置がずれていたりすることも、大量生産のプリントにはない優しさが感じられて。
ポストカード、二つ折りカード、便せん、ブックカバーなど、各種ご用意いただきましたが、この期間中、たくさんの方に求めて頂いて、残り僅かとなっております。
お客さまとお話してみると、手紙で気持ちを伝えることをまだまだ日常的に大切にされている方が多くて、驚きます。
日々、メールの返信すら覚束ない自分を省みて、恥ずかしい気持ちに。
botaniko さんの紙モノに触れて、紙の上に、それを手にした人の顔を思い浮かべながら、言葉をそっと連ねていくことの愉しみを思い出しました。
今年から、店内では古い切手も数種、販売しております。
この場で、ずっと書きそびれていた一通の手紙をしたためてみてはいかがでしょうか。

紙モノでもうひとつのおすすめは、スウェーデンから届いたボタニカルポスター。
こちらは、中軽井沢の「natur」さんから提供していただいたもの。
以前から、お店を訪ねるたびに気になっていて、今回、わがままを言って特別に絵柄も選ばせてもらいました。
naturの須長さんによれば、1960〜70年代の植物図鑑から描きおこしたものではないかと。
印刷されたものではありますが、一枚一枚、絵柄は違って、同じ物は2つとありません。
花の種類は、日本にも似たようなものがあるものも、まったく初めて見るようなものも。
全体像と、花びらや実の部分を詳しく描いたものが添えてあったりします。
淡くてシブい色合いがなんとも素敵。
以前、須長さんのおうちに遊びに行かせてもらったとき、リビングの壁にこうしたボタニカルポスターが何枚も額に入れて並べられているのを見て、ああなんて素敵なんだろうと溜息がもれました。
シンプルなインテリアの部屋の白壁に、何枚かすっと架けられていたら本当にいいだろうなあと思い浮かべています。
ぜひお気に入りの何枚かを見つけてみてください。

「キジブックス」と、「追分コロニー」さんにも選書に協力いただいた花と植物にまつわる古書も、少しずつ補充をしながら、まだまだ良いもの取り揃えています。
近年、その仕事が再注目されている植物学者・牧野富太郎氏の植物記シリーズも再入荷。
実際の庭づくりの参考になる洋書類、人気のターシャ・チューダーの庭の本、安野光雅さんや北軽井沢にも縁ふかい古矢一穂さんの草花の絵本など。
手元に長く残しておきたい一冊をご用意しています。
「小舎びらき、花々と。」は、明日を除くと、28日(水)31日(土)6月1日(日)のみとなります。
よろしくお願い致します。