「ブックニック」では、本を探して買い求める愉しみと同時に、さまざまな「本と触れ合う愉しみ方」をご用意しています。
毎回、作家や編集者の方を招いて、本にまつわるお話を聞かせていただいているトークイベント。
今年は、作家・編集者の松家仁之(まついえまさし)さんをお招きします。
松家さんは、新潮社の編集者として、長年多くの作家さんを担当され、数々の書籍を世に送り出してこられました。
雑誌「考える人」を創刊、編集長を務められ、「芸術新潮」の編集長も兼任。
さらに、良質な海外文学を美しい装幀とともに楽しむことのできる「クレストブックス」シリーズを発刊されるなど、私たち読者にたくさんの本を届けてくれた、まさに“物語の生みの親”とも言うべきような存在の方です。
そして今回、なんとしても松家さんを「ブックニック」にお招きしなければと思ったのは、一昨年、小説家としてのデビュー作『火山のふもとで』を読んだことがきっかけでした。
特に前情報もなく、ひとつの小説作品としてなにげなく読み始めたのですが、冒頭の数頁を読んだところで頭に雷が落ちたような衝撃が!
この作品の舞台となっている浅間北麓の「青栗村」は、どこからどう見ても、ここ北軽井沢。
細やかに丁寧に描き出される風景の描写はどれも、いつもこの場所で見たり眺めていたものばかり。
それも、「この美しさを誰かが表現してくれないものかしら」とずっと願っていたとおりに著わされていて。
その興奮をいったん落ち着けてから、あらためて読み込んでいった物語としての世界も、非常にきめ細やかで端麗で、頭からどぶんと小説のなかに潜り込んで、しばらくそのまま出てきたくない、という体験を、久々に味わいました。
そして、いつもならば感じる、作品から現実に戻ったときの夢から醒めたような失望を、この作品に限っては(わたしという読者に限っては、というべきか)、感じなくて済むという幸福!
(なぜなら、本を閉じてあたりを見回してみても、物語の延長のような光景が広がっているのですから...。)
それからわたしは、夢中なままに、おそらく生まれて初めて、作家へのファンレターというものを書いて送ってしまいました。(今振り返れば、うわごとの連続のような恥ずかしすぎる内容で、松家さんはもうお忘れだと__忘れていて頂きたいくらいのものなのですが。)
以降、会うひと、会うひとに、この作品を奨め回ってしまった経緯は、わたしと近いところにいる方々ならご存知のとおりです。
先月、8月には、北軽井沢の別荘客を対象とした講演会が、同じく北軽井沢ミュージックホールで開催され、そこで初めて松家さんの肉声でのお話を拝聴したのですが、その声と語り方がまたなんとも魅力的で...。
描かれる作品同様、“大切なことは、静かな、小さな声で、語られる”のだということを__、そしてこの語りをひとりでも多くのひとに聴いてもらいたいという思いが新たになりました。
昨年発行の『沈むフランシス』につづき、先月末には、3作目となる『優雅なのかどうか、わからない』という小説を上梓されたばかり。
編集者として、そして作家として、「本」と「物語」とに向き合い続ける松家さんを、このたび、念願叶い、ブックニックの場にお招きできることが、嬉しくてなりません。
「本からはじまる」というテーマでのお話の具体的なところは、わたしも当日まで未知なるままですが、そこでのお話はきっと、聴いた方の胸のなかにいつまでも小さな灯りとなって残るものになると確信しています。
ここまで、熱弁をふるってはきましたが、肝心のお申込は、現在ほぼ定員に達し、このあとは立ち見での受付けとさせて頂きます。(それでもぜひ、とお薦めしたいです!)
ブックニック会場では、松家さんのこれまでの著作、また今月発売されたばかりの雑誌「Coyote」(10周年記念号。写真家・星野道夫の愛したアラスカを、旧友である松家さんが旅し、寄稿されています)を販売いたします。
詳細は、《
こちらのページ》にてご確認ください。
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5日(日)には、全国各地で開催され、人気を集めている『ブクブク交換』を会場内で行ないます!
「ブクブク交換」は、参加者がテーマのもとにお薦めの本を持ち寄り、その魅力をプレゼンテーションし合ったあとに本を交換するイベント。
自分が読んで気に入った本についてアツく語れる上に、最後には新たな本との出会いがプレゼントされる__。
シンプルながら、これぞ、本好きのための本好きによるイベントです!
実は今回の「ブクブク交換」は、東京・神楽坂の本のお祭り「Les rats de bibliotheque(レラドビブリオテック)」を主催されているギャラリー「うす沢」さんの発案・協力のもと、行なうことになりました。
夏場は北軽井沢に出張店を開く「うす沢」さんとは、以前からお付合いをさせて頂いていますが、私たちが北軽井沢で本のイベントを盛り上げて行きたいと話したところ、即答で「ブクブク交換やりましょう!」と提案してくださいました。
私たちだけで企画できることには限りがあります。こんなふうに「一緒に!」と声をかけてもらえるのはとてもありがたいことです。
「ブクブク交換」は、参加無料。
当日は、ブックニックにあわせた『北軽井沢・嬬恋』『避暑地・高原』『秋』の3つのテーマの中から、これぞと思える一冊を持って、会場へお出かけ下さい!(事前予約も受け付け中です。)
詳細は《
こちらのページ》にて!
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おととしのブックニックでは、絵本の作り方ワークショップを開いてくれた、軽井沢在住の絵本作家「accototo(アッコトト)」さん。
今回は、お子さんから大人まで、誰でも気軽に参加していただける「森のガーランドづくり」を開催してくれます。
ガーランドとは、最近あちらこちらのイベント会場などで目にする旗のような飾りのこと。
イベント会場だけでなく、お部屋のインテリアとして取り入れてみても、雰囲気がパッと明るくなって楽しいですよね!
このワークショップには、マスキングテープブランド「masté(マステ)」が協賛をしてくれるため、素材として、カラフルでポップ、みんな大好きなマステをたっぷり自由に使って、オリジナル仕様のガーランドが作れます。
出来上がったものの一部は、2日間の森のブックフェス会場を彩るディスプレイとして使用させていただきますので、参加者おひとりおひとりが会場のデコレーターに!もちろん残りの一部は持ち帰ってご自宅用にも。
4日(土)のオープニングから12時まで。お好きな時間にご参加ください!
詳細は《
こちらのページ》にて。
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そして、もうひとつ。
まだ謎のヴェールに包まれたままの企画があります。
松本に暮らしながら詩作をつづけるウチダゴウさんに、「詩」や「ことば」をテーマに、ブックニックの場ならではの表現(インスタレーション)をお願いしました。
「詩」というと、どうしても小説などの作品とくらべて距離感を感じてしまう。難解なものとして敬遠してしまう。そんな方はまだまだ多いと思います。
ふだんから様々な方法で「詩」を暮らしの身近に引き寄せる活動をつづけるゴウさん。
今回の依頼に対しては、ある意外な方法で、私たちを「詩」の入口へと導いてくれます。
その方法とは、「音」。
詩の生まれるときに詩人が出会う「音」とは、どんなもの?
ほかでは経験したことのない「詩を聴く」体験。
さて、どのようなスタイルで当日楽しむことができるかは、足を運んで頂いた方だけのお楽しみ。
なぜだかわからないのですが、ここ数日、詩人は大工仕事に勤しんでいる様子!
ブックニックとウチダゴウさんによる実験的な試み。
まっさらな「耳」だけご用意の上、どうぞご来場ください。
photo: Go Uchida