遅ればせながら、新春、あけましておめでとうございます。
新春とか、迎春とか、初春とか、字面だけのこととはいえ、口にすると嬉しくなるので、むやみに連呼したくなります。
「初春や~、ああ初春や、初春や~~!」
…と、いくら呪文のように唱えてみても、窓の向こうに広がるのは、相変わらずの一面雪景色。
年が明けて以降、まともな雪はないのですが、融けて凍ってを繰り返した路面は四方八方アイスリンク。歩くにも、運転にも難儀する日々。
結局、12月に降った分は、このまま春まで根雪になりそうです。
大晦日の更新では、ただもう飲みたい気持ちが逸って、うやむやに「乾杯!」で〆てしまったので、年始は少し真面目に豊富のひとつやふたつ、書き残しておこうかと思います。
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昨年一年は、個人的にはいつにも増して猛スピードで過ぎていきました。
お店や日々の暮らしと関係のないことはこの場にあまり書いてはきませんでしたが、咋春から、東京時代にお世話になった大先輩編集者Yさんのアシスタントとして、おもに雑誌の取材・執筆のお仕事を手伝わせてもらうことに。
たまの出張と、遠隔でもできることに限られるため、微々たる戦力にしかなれないのですが、それでも仕事柄、たくさんの方にお会いする機会に恵まれ、その意味では変化と刺激の多い毎日でした。
取材のたびにどきどき緊張したり、失敗をして落ち込んだり、褒められて有頂天になったり。
この年にして、新社会人のようなそんな新鮮な気分を味わえたこと。
また、こんな辺鄙な場所に暮らしながら、第一線で活躍される方にお話を聞けたり、スタッフの方とご一緒にお仕事ができたことは、貴重で幸せな体験でした。
「書いて伝える」という行為に対して未熟さを痛感しながらも、やっぱり人の話を聞くのは面白く、その何がしかを自分の言葉に置き換えて他の誰かに伝えていくということを、誠実にやっていきたい、とあらためて思えた一年でした。
同時に、自分がほんとうに書きたいこと、残したいこと、伝えたいことはなんだろう、ということが、終始、頭の片隅に引っかかり続けた一年でもありました。
職業ライターである以上、自分の興味のあるものばかり扱えるものでもないことはよくよくわかってはいるものの、どうも、今の雑誌が追いかける流行や、最新モノや、おしゃれとされるモノものへの興味や好奇心は薄くなっていくばかり。
(この年にしてそこまで枯れてしまうのもどうかと思いますが…。苦笑)
たくさんの情報が発信されては消費され消えていく。
そのスパイラルは今に始まったことではありませんが、そのサイクルがどんどん速く、短く、薄っぺらいものになっていることはおそらく事実。
そこに違和感を抱きながらも、一緒になって流されていることに、居心地の悪さや罪悪感を感じることも増えていきました。
また、いまだに多くの物事が東京を中心に回っていたり、東京を基準に測られたり評価されたりすることにも、このままでよいの?という疑念もあったり。
「そんなこと、のんきに“蚊帳の外”にいるから言えるのでしょう!」と、中央でバリバリやっている方からお叱りを受けてしまうかもしれませんが、今こうして町外れの“蚊帳の外”にいるからこその実感や体感は、なおさらごまかさずに大切にしなければいけないのではないかとも感じています。
そんななかで見えてきたのは、これまでにもまして「足元にあるものを見つめ直したい」という思いでした。
昨年の今ごろにも同じようなことを書いているので、進歩がないというか、立ち止まったままだとも言えますが。
ただ、そうした思いと呼応するように、昨年の半ばくらいから、地元に眠る歴史的にも価値のある建築調査のお手伝いをする機会に恵まれたり、またある方との出会いから自分自身のルーツに繋がることを掘り下げる必要性に迫られたり、これまでとは違う動きがちらほら周囲に波立ち始めて。
そこに、年末になってまたひとつ、今後の環境に大きな変化が生まれそうなお話も持ち上がって、いよいよびっくり。
自分の年齢的にも、こちらに暮らすようになって10年という節目であることも、(もしかしたらもっと大きな時代的なことも?)いろいろなことが相まって、流れの方向が変わってきたように感じます。
ここからは、その流れを意識しながら、自分になにができるか。
大きなことはできないけれど、なんだかまた新しい出会いも出来事もが待ち受けている気がして、今は素直にわくわくしています。
個人的なことばかり書いてしまいましたが、お店としてのこれからについても、半分冬眠の寝ぼけ頭ですが、ぽつぽつと思い描いています。
ひとまず相方とは、今年・来年の2年という期間に、今後の方向を探っていこう、と話しています。
もともとこれ以上お店を大きくしたり、手を広げるということは考えていないのですが、とはいえ自分たちの年齢とともに変わっていかなければいけないこともあるでしょう。
そのための方向付けと準備をする今年と来年にしたいと思っています。
そして、お店については、(聞こえは悪いかもしれませんが)自分たちのちっぽけなこだわりなんて捨てちゃって、自由な、なにものでもない場所になりたい、とも思います。
これについてはまだ感覚的にそうとしか言えないのですが、「素敵な○○さんのライフスタイルづくりのこだわり」とか、「自分らしく生きるためのポリシーは?」とか、そんなことに振り回されるのってつくづくつまらないなぁ、と。
こだわりがあること、ブレない信念があることばかりが、立派で素敵!というように見られがちだけれど、別にこだわりなんてなくたって、ブレまくったって、本人たちが、楽しく、気持ちよく、生きていられたらそれでいい。
むしろ、人はいろいろなものに影響を受けて変化していくから楽しいのに、「ブレないぞ」なんて頭コチコチにしてしまうのは、見ていても窮屈だし、もったいない。
あるとき、ふっとそんなふうに思えたら、肩の力が抜けました。
(これじゃあまるでこれまできっちりやってきた人みたいに聞こえますが、実際はこれまでも風の吹くまま気の向くままのブレブレ人生ですけれど…!)
そんなこんなで、ああ、新年早々、長ったらしいたらありゃしない!
(とはいえ、正月休みが明けてからお仕事が嵐のように吹きまくっていて、ここまで書くのに一週間もかかってしまったのですが。)
今年もひとまず、相方の口癖どおり「ぼちぼちと!」進んでいこうと思います。
どうぞ「ぼちぼちと」お付合いくださいませ!
↑おととい、今年初の東京遠征からの帰り道、新幹線から見た富士山と夕焼け。
ちょうど真裏に沈む夕陽に照らされて、実際にはもっともっと大きくくっきりときれいなシルエットが見えました。
この日は、以前から憧れていた方にインタビューすることが叶い、そこでまた、今の気持ちにシンクロするような、「今、わたしはそういう言葉を聞きたかったんだ!」というお話を聞けて、胸がいっぱいに。
今年一年の、もっとおおげさに言えばこれからの人生の、ひとつの目標がすーっと目の前に現れたような記念日になりました。