一昨日のこと。
車の雪下ろしをしていると、うちの前の通りの100mほど先を何かが動いている。
動く影は2つ。ご近所さんが夫婦で散歩をしているのかなと目を凝らしてみたら、違った。
丸々とした「中の大」サイズのイノシシが2頭、連れ立って、除雪されたばかりの道路を跳ねるようにこちらから向こうへ歩いていく。
左右を入れ替わったり、ときどき立ち止まって後ろを振り返ったり。遠目ながら一瞬はっきりと目が合った。
すわ、こやつが近頃、周囲を荒らし、モモを騒がせ、私たちの安眠を妨げた張本人か!
ちょうど車で近くに出かけるところだったので、慌ててエンジンをかけ、ゆっくり後を走らせてみたが、国道の手前ですでに姿はなし。
国道をやすやすと渡ることはないだろうと、手前でキョロキョロしてみたら、案の定、国道の20mほど手前、ミニゴルフ場のネットの切れたあたりに、道から逸れて飛び込んだ足跡が残っていた。
夕方、モモの散歩に合わせて、あらためて追跡パトロール開始。
ひとり(と一匹)では、鉢合わせしたときに分が悪いので、相方にも付合ってもらう。
(いざ襲われたら一人も二人も三匹も関係ないと思いつつも。)
ミニゴルフ場を挟んだもう一本奥の道に、やっぱり新しい足跡が残っていた。
足跡の横には、黒々としたホカホカの置き土産もしっかりと…。
まるで私が追いかけてくるのを知って、わかりやすい目立つ場所を選んで「はぁ〜スッキリ!」とお尻を振り振りしたのが目に浮かぶようでムッとする。
一夜明けて。
夜の間にモモはほとんど吠えなかった。なので油断していた。
カーテンを開けて、なにげなく庭先を眺めると、ドングリベンチ(庭の奥のハンモックをかけている木のところ)のまわりが、大きく2ヶ所、掘り起こされている。
とうとう庭まで侵入してきたっ!
近づいて観察すると、場所によってはずいぶん深く掘り返されている。
たしかにここにはドングリも栗もたくさん埋っている。
雪の上から嗅ぎ分けて、足よりも鼻先でグイグイ掘るというから、かなりの「耕耘力」だ。
相方は「どうせなら空っぽの畑のほうを耕してくれたらよかったのに」と。
いやいや、感心している場合ではない!
そこから目と鼻の先には、春の楽しみのために蒔いた水仙・チューリップ・クロッカスの球根もある。
あれだけはどうにも死守したい。
モモもモモだ。ちょっと仮の室内犬になったからって、油断しすぎじゃないか!
(吠えたら吠えたで煩いと怒られるのだが。)
球根と同時にもうひとつ心配になったことがある。
うちの庭に隣接するモミの木が数本植林された場所も、見事に掘っくり返されている。
そこはいつも、キジの親子が隠れ場所として使っていて、この冬もしょっちゅう姿を見ていた。
イノシシはキジの子供を襲ったりするだろうか…。
日中もなんとなく気になってチラチラ見やっていたら、昼前、一羽の大きめのキジの雄が現れた。
首をフリフリあたりをうろついたかと思うと、そのうち、イノシシが派手に耕したところにやってきて、そこでしきりに地面から何か拾っては食べている。
どうやら、イノシシ耕耘機のおかげで、キジも食べるものにありつけたらしい。
襲われたのではというこっちの心配もよそに、しっかりおこぼれに預かっている!
__と、そこに、わが家のノラ猫チームのなかの一番の若手、まだら三毛の「チビ(またはトンボ)」が、不意をついて背後から雄キジにアタックを仕掛けた!
むさぼることに夢中だったキジは、さすがに驚いて「キェーッ」と鳴きながら、近くの木の中ほどに飛び移る。
負けん気でまだ怖いもの知らずのチビは、すかさず木の下まで跳ねていき、見上げてひと呼吸ためたあと、猛烈なスピードで木をよじ登る。
またもやキジ、「キェーッ、キェーッ」と喚きながら、渾身の羽ばたきで(ほんとに飛ぶのが苦手なのがよくわかる)奥の林に向かって去っていく。
チビ、ちぇーっというように木から転げ落ちる。(いやいや、最初からムリだろう。相手は2倍の体の大きさなのだから。)
一幕終了。
出演、キジ・ネコ・イノシシ(回想シーンのみ)。
このトリオでは、桃太郎の付き添いにも(キジしかかぶってない)、花札の役にも(こっちはイノシシだけ。キジもあってもよさそうだけど… )ならないなぁ。
おかげで、人里離れた冬の山小屋暮らしも、なかなか賑やかなものだけれど__
いやいや、話が逸れたぞ。イノシシだ。
これ以上のやつらの侵入は、断固お断りせねば。
ただ、2日経った今でも、後ろを振り返り振り返りしながら、急ぎ足で絡まり合うように遠ざかっていった2頭の姿が、どうしても瞼から離れない。
2頭は、親子だろうか。
これ以上あちこちウロついては、あなたたちかニンゲン、どちらかが痛い目に遭う。
どうかその前に、私たち軟弱なニンゲンが入り込めない森の奥に、安らかな居場所を見つけてくれたらよいのだけれど__。