3月20日。
先週、20℃近くまで上昇した日を含め、気温がぐんぐん緩み始める。
この日も朝から10℃以上。起きてまずストーブのスイッチに手が伸びずにいられること自体、数日前では考えられなかったこと。
こんな陽気の日にしては珍しく、パリッとした青空。
久しぶりにくっきり輪郭を見せた浅間もずいぶん雪融けが進み、春の合図の鳥の雪形が、東の裾のあたりに覗き始めている。
ここ数ヶ月、ほぼフルタイムで大工仕事チームに参加している相方と、関西への旅行や東京出張でパタパタ出たり入ったりしていた私。
ふたり揃って家で過ごせる休日は、実に数週間ぶり。
朝ごはんもそこそこに、外に出る。
家のまわり、いたるところに雪融けの川と沼。
屋根に最後にへばりついている雪ぶとんからも、滝のように流れ落ちてくる水の音があちこちから響いて来る。
12月以来、一度も顔を覗かせなかった土の地面が、庭の1/3くらいの面積に広がってきた。
毎年、庭の緑のトップバッターとなるクリスマスローズ。2、3日前まで、雪の下、どこにあるかもわからなかったのに、今朝は雪を押しのけるように濃いグリーンの葉を覗かせていて、「わっ」と声が出る。
シジュウカラの群れのチチ、ジージーというおしゃべりもいつもより賑やか。どこか高いほうからコガラの澄んだヒーホヒーホヒーも聞こえる。
地面から湧き上がってくるような暖かさ。吹いても身を屈めなくてよい風。初めての緑。
これまで大地を覆っていた重苦しい緞帳が、するするすると巻き上げられて、舞台の次の幕が始まったように、たしかに空気が一新した。
わおーと叫び出したいような、笑い出したいような気持ちがむくむく湧き上がってきて、ぬかるんだ地面をわざとワシワシ大股で歩いてみる。
春だ、春だ、嘘みたいだー!!
こうとなったら、家の中にじっとしてはいられない。
大工道具一式を引っ張り出してきた相方は、まだ半分雪に足を取られながら、庭に新たな造形物を作り始める。新しい東屋になる予定。
現場で一緒になるMさんからお古のコンプレッサーをいただいたので、いろいろ試し打ちしてみたくて仕方ないらしい。
わたしは日なたのベンチに猫と並んでぼんやり眺めていようと思ったけれど、やっぱりなにか動きたくなって、春からのお店で使うコースターのヤスリがけ任務を拝命する。
そのうち、ふと思い立って、出張本屋で使う看板を作ることに。廃材を組み立ててもらい、わたしはペンキ塗り。慌てて仕上げたので、ロゴを抜くところで滲んでしまったけれど、それだって気にならない。
なんといっても、外に出て、腕まくりをして、寒さを気にせず動けている。そのことが幸せで、幸せで、なんだってやれそうな気持ちになっている。
傍らでウトウト眠りこけていた野良チビのトンボが、ダッと草むらに駆け出したかと思うと、キューキュー鳴く野ネズミをくわえて、得意そうに戻ってきて、どこかに消えた。
あの子たちも、冬の間に鈍った体を動かしたくてたまらないに違いない。
2015年3月20日。
個人的に、今年の春の開会をここに宣言します!