9月27日 鼻曲山へ。
そういえば、うちから車で10分で入口まで行けるのに、鼻曲山に登ったことがなかった。
浅間山の東、ちょうど関東平野の西の端っこの壁になる峰々の一部。
本格的な登山コースは、霧積温泉から、白糸の滝に近い長日向から、二度上峠から、とそれぞれあるが、もっとズルして手短に登れるルートがある。
ズルのコースで名前も「はなまがり」なんて、へそ曲がりの初心者トレッカーの私にはうってつけではないか!

お手軽コースの入口は、「軽井沢スノーパーク」ゲレンデ。
予報の「曇り後晴れ」を信じてみたけれど、朝8時時点で厚い雲。紅葉にもまだ少し早いし、ゲレンデ周辺には人っ子一人いない。
ズルの上にさらにズルをしてリフトもあるのだが、シーズン外のため停止中。
(動いてたって乗りませんけどね!)
看板も何もないため、とりあえず比較的傾斜の緩そうな、向かって右方向の斜面を登り始める。
実はこの最初の斜面登りが、このコース中、いちばんキツかった…
まだ身体も温まっていないので、膝が重たい。
後ろを振り返って景色を眺めるフリをしながら、こっそり休み休み、15分ほどでリフト終点へ。
晴れていればここでも背面に浅間山がドーンと見えるはずだが、すべてはガスの中。おまけに小雨も降り始める。

ここから山歩きスタート。細い林道を進む。
靄ったなかでも、ガマズミの赤い実がパッと目立つ。
林道の脇の薮には、猫の尻尾のような真っ白なサラシナショウマの群生。幻想的。
夏ならばここは、希少なレンゲショウマが見られることでも知られているらしい。あの薄紫の花は見てみたいなぁ。
雨に濡れた森は、自分たちの足音さえ消してしまうほど物音一つしないので、熊除けの鈴を大げさに鳴らしながら歩く。
遠くでキツネの鳴き声がした。親が子供に注意しなさい(ヘンなのが歩いてますよ)と伝えている声。

20分ほど進むと、少しずつ傾斜がキツくなってきた。
「トレッキングポールがあれば楽なのになあ」と愚痴ったら、相方がそこらへんに落ちていた手頃な木をナイフで削って持ちやすくして、ナチュラルポール(!)を作ってくれた。
ちょっと太いし、一本だし、山登りというよりお遍路さんのようだけど、やっぱりあると楽だ。
根っこだらけの段差を、ポールを支えにぐいっと登る。
得意になっていると、傾斜が険しくなり、摑んで登るためのチェーンロープが現れた。
ロープを摑むにはポールが邪魔になる。
仕方なく、せっかく手に馴染んできたポールを諦めて(そんなことで渋っていたら、帰りにまた拾えばいいじゃんと言われてそうした)ロープを摑んでよじ登る。
あれ、けっこうハードな山登りじゃん!濡れて滑るし。
よじ登ること10分ほど。
眺望がまったくないので高さの基準がわからないまま、なんとなく登りきった感のあるなだらかな熊笹の間を進むと、左手に二度上げ峠方面からの道との合流点。(かなり鬱蒼としていたけど通じてるんだろうか。)
その先で、右手に長日向方面からとの合流。(こっちも崖のような急斜面。)
その向こうに、10畳間くらいの平らなスペースがあり、足元に山頂を示す小さな柱。
やったー、1655m、登頂!
… という感慨は、40%くらい。
なにしろ、予想通りではあるのだが、視界はゼロ。見渡す限り真っ白モヤモヤ。
晴れていれば浅間山に白根の遠景まで見えるらしい。
スマホの山アプリをかざして、位置だけは確認しながら、エアパノラマ… 。
まだ10時を過ぎたくらいだったけれど、せっかくここまで来たので、持ってきたお弁当を広げる。
それなりに歩いて汗もかいた後なので、お弁当とお茶はおいしい。
しかし静かだ。鳥も鳴かない。

30分近く粘ってみたけれど、ガスは晴れるどころか濃くなってくるようだったので、来た道を戻る。
ロープのところは、脇に誰がつけてくれたのかジグザグ迂回する獣道のようなところがあったので、下りはそちらを。
無事、ナチュラルポールを回収。
帰り道はゆっくり、キノコウォッチングをしながら。雨上がりなのでキノコは大賑わい。
だいぶ下ってきたところで、初めて右手のカラマツ林の向こうに山並みが見えた。浅間隠山。
リフト終点まで降りきると、浅間隠しから、手前にコブのように見える鷹繋山、二度上峠方面は視界がきいた。浅間は相変わらずガスのマントにすっぽり。
ゲレンデ部分には、浅間の噴火の軽石がゴロゴロしている。
同じ形状に見えても、赤っぽいの、黄色っぽいの、白っぽいの、と色がいろいろ。
これは年代が違うからなのか、飛んできた場所が違うのか。今度、H先生に聞いてみなくては。

頂上での休憩を抜きにして、登り1時間半、下りで1時間ほど。
朝8時前にうちを出ても、11時過ぎには戻れてしまった。
てっぺんは1655m、でも登り始めがすでに1300m近いはずなので、高低差は300ちょい。
見晴らしがないと山登りの楽しみは半減だけど、それでも、ふだんの休日ならグダグダ過ごしてしまうお昼前までに、「行って帰ってきたのだ」という充足感は悪くない。
だーれもいない靄のなかの林道を歩くのも、ちょっと夢の中の景色っぽくてよかった。
北軽井沢周辺にいて、ちょっと手軽に静かに歩いてきたい、という時には良いコースかと。
今ごろは紅葉も真っ盛りでしょう。
以上、浅間山麓山歩き、「ヘソまがり、鼻曲がりへ行く」の巻、でした。
【
Google Map】
◎参考サイト
Yamakei Online 鼻曲山
http://www.yamakei-online.com/yamanavi/yama.php?yama_id=337
ぐるっと浅間楽名山
http://rakumeizan.kitakaruizawa.net/hanamagari/