今週末に長野原町で上映される映画のご案内です。
映画『望郷の鐘 満蒙開拓団の落日』上映会
& 山田火砂子監督トークショー
日程:2015年11月29日(日)
時間:開場10:30/映画1回目 11:00〜12:45/監督トークショー 13:00〜13:45/映画2回目 14:00〜15:45
場所:長野原町山村開発センター
入場料:前売1,000円/当日1,200円
主催:(有)きたもっく/「望郷の鐘」上映実行委員会
問合せ:(有)きたもっく(担当:土屋) 0279-84-6633
満蒙開拓団の教師として昭和20年、満州に渡り、自らもシベリア抑留を経験。帰国後は、中国残留孤児、残留婦人の救出に尽力した、長野県阿智村の住職・山本慈昭の生涯を描いた物語です。
監督は、「はだしのゲン」実写版などの「現代ぷろだくしょん」代表・山田火砂子さん(82歳)。
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満蒙開拓は、北軽井沢の歴史とも大きな関わりがあります。
私たちが夏場お世話になっている清水さんをはじめ、大屋原地区やハイロン地区などの農家の方々は、満蒙開拓団に参加し、戦後、満州から引き揚げ、再びこの地で開拓を行なってきました。
今ある北軽井沢の雄大な酪農地や高原野菜の畑作の風景は、この70年に開拓の方たちが苦労を重ねて作り上げてきたものです。
小さい頃からこの風景を当たり前のものとして眺めてきた私は、ここに移住して初めて戦前・戦中の満蒙開拓に繋がる歴史のことを知り、ショックを受けました。
観光地や別荘地としてなにげなく美しい景色を享受している影で、生きるか死ぬかの暮らしがあったこと。
それもまだたった60数年前のことで、まだその当時の方が仕事を続けていられることにも。
そこから、自分なりに少しだけ歴史をかじり、さらに、私のように何も知らない世代に対して、何かの形で記録し、伝えていかなければならないと感じました。
ただ、私の場合、そこで止まってしまっています。
理由は2つ。ひとつは、当事者の方にとってはできればもう辛い記憶は思い出したくない、そっとしておいてほしい、という“空気”を(勝手な思い込みかもしれませんが)感じてしまったから。
個人の興味本位であれこれ鼻を突っ込んで聞き回ったりしては、失礼ではないか。
特に、ふだんの生活でもお世話になっている方もいるとなると、あらためて「当時のことを聞かせてください」と切り出すのは、楽しいおしゃべりに水を差すようで、勇気がいります。
もうひとつの理由は、見たくないものまで見てしまうかもしれないことに怖じ気づいたから。
「苦難の歴史」とただ言葉にしてしまえば美しく響きますが、そこは人間同士がすること、きれいごとだけでは済まされないこともたくさんあったはず。
なにしろ、今の私たちには想像はできても本当の意味で共感などできない、命の極限状態での暮らしなのです。
その、いわば“臭いもの”にまで、きちんと目を向け、聞いた以上は引き受けられる覚悟はあるのか。
そう問われると、自信が持てないまま、最初のショックから10年余りを過ごしてきてしまいました。
今回の映画上映は、そうしてなんとなく知ったつもりになってお茶を濁してきた自分への戒めのためにも、良い機会を与えてもらった気がしています。
こんなふうに書いてしまったら、肩肘はって見づらくなってしまうかもしれませんが、そこまで身構えずに「満蒙開拓ってなんだろう?」というところからでも十分です。
国の施策に従って大陸に渡り、そこで末期の戦争に巻き込まれ、家族とも死別または生き別れになる。
個人ではどうすることもできなかった大きな流れに翻弄されてしまう人々の姿は、決して歴史のページの片隅で紹介されて片づけられることではありません。
今もまさに、世界の裏側で実際に起きていることです。
放っておいたらまたいつ私たち自身がそうなるともしれない、他人事ではない「自分事」の話なのです。
世界がまた少しずつ軋みながら加速していきそうな今だからこそ、この映画が伝え残そうとしていることを、しっかり見ておかなくてはならないという気がしています。