12月11日は、嵐の一日だった。
小雨降る生温い朝。この時期で外の気温が15℃を超えるなんて異常だ。室温より外の方が暖かい。
昼前に暴風雨になる。西の方角、浅間の向こうからゴォォォという音とともに雨の一団がやってきて、続いてザァァァと荒れた風が窓を打つ。
しばらく繰り返したかと思うと、雲が割れて日が差してきて。
そうかと思えばまた空が暗くなり、ゴォォとザァァ。靄がたちこめたり晴れたり。
外の気配が気になって、うちにいても落ち着かない。
15時過ぎ、もう雲は過ぎたかなと、犬を連れて散歩に出る。
出た途端、また雨粒が落ちてきてタイミングを間違えたことを知るが、仕方ない、そのまま進む。
こんな日はいっそ…… と、浅間からの西風がダイレクトに吹いてくる牧草地へ。
雪に埋もれる前の最後に蒔かれた堆肥がところどころに黒いシミをつくり、あちこちにぬかるみができている。
頭上の重たい鉛色の雲。吹きすさぶ風。足元のまだらな黒い模様は、写真で見たスコットランドのピート(泥炭)を掘り出す草原に見えなくもない。
北軽井沢はふだん風はさほど強くはないが、ひとたび嵐になると、その威力は街中にいたのでは体験したこともないような迫力になる。
見渡す180℃、その空と大地が風と一緒になって立ち上がって迫ってくる。
スコットランドや、アイルランドの島々、「嵐が丘」の舞台のイギリス・ヨークシャー地方とか。
わたしのなかの「侘しく色のない風の強い荒涼とした土地」のイメージをひっくるめた(多少乱暴だが)「荒野」の風景に、わたしと犬一匹。
無慈悲っぷりが逆に爽快になってきて(嵐ハイ?)、わざわざ両手を広げて風に打たれまくってみる。
「ヒースクリフ〜〜」と叫びまではしないものの、気分はキャサリン。
これが、周囲が森ばかりでも、田んぼが見えていたりしてもいけない。
舞台装置は、だだっぴろい平原と、足元にはゴロゴロの石、枯れて引きちぎれそうな草花だけ。
耕作に向かない荒れ地だけの特権(?)だ。
そんな荒野の嵐の風景を、国内で、それも関東圏で撮影したい映画監督がいるなら、ぜひ北軽井沢をロケ地にお薦めしたい。(年に数度の嵐の日を見極めるのは難しいかもしれないけれど。)
青空をバックに穏やかに神々しい浅間山や山並みが、冬の北軽井沢の「オモテ」の顔なら、こんな嵐の日の風景は「ウラ」の一面を見たような、ゾクゾクする怪しい美しさ。
頻繁にでは困るけれど、ときどきならまたひとりでやってみたいかも…、「嵐が丘ごっこ」。