暖冬のおかげで暦の感覚がなんとなく薄れたまま、冬至が過ぎ、クリスマスが過ぎ。
気づけば「もういくつ寝ると〜」なところまで、暮れも押し迫ってきていました。
スキー場のニュースなどで見るとおり、北軽井沢にもまったく雪はなし。
しばらく前まで夜でも氷点下にならない日もつづき、すっかり麻痺し始めていましたが、ここ数日、ようやくピリッとキリッと冷え込むようになり、寒さは苦手だけれど、やっぱりこうでなくては… と少しホッとしています。
今年はますます、ふだんの徒然なることは twitter や Instagram で記録したり発散してしまって、ブログがいよいよ疎かに。
このブログを始めた11年前には、毎日のように書いていたのが嘘のよう!
ただ、やはり残るかたちで書いておいたほうが、記録になるし、後から読み返せるのも面白いので、来年はもう一度こっちに戻していきたいなあ、と思うけれど、どうなるかしら… 。
ひとまず、「今年の書き残しは、今年のうちに」ということで、もう2ヶ月も前のことになるけれど、山を歩いた記録だけは忘れないうちにUPしておこうかと思い立ったので、突然ですがタイムスリップ!
▶▶▶10月上旬某日、ひとり小浅間山へ。
9月は雨が多くてすっきりしない日が続いていましたが、この日は朝から雲ひとつない秋晴れ。
数日前に、
相方と鼻曲山に登ったとき、視界不良で頂上からの景色が望めなかったことが心残りだったこともあって、朝から外を見てはそわそわ。
進行中の原稿の仕事があったけれど、ちょうど送り渡した相手からの返事待ち。2〜3時間くらいなら不在にしても大丈夫。そう思い立ったときにはもう10時半。
通常、山へ行くなら、早起きをして、とっくに現地についてピークを目指している時間。
でも、わが家からなら、今からでも“山登り”に間に合うコースがひとつだけあるのです。
それが、浅間山の東端におできのようにくっついている「小浅間山」。
2万年以上前の浅間の噴火活動時にできた溶岩ドームで、ぽっこりと丘状をした見た目にも可愛らしい小山です。
実際、峰の茶屋にある登山道入り口から標高差200mくらい、片道30〜40分で登頂できてしまうので、小さい頃からよく遊びに行った気軽なハイキングコース。
ただ、このコース、なんといってもそのお気軽さのわりに、満足感がすごいのです。
まずはコンビニに寄って、おにぎりと唐揚げくん的なものを入手し、車で10分たらずで峰の茶屋へ。
国道沿いに車を停め、浅間山の噴火活動についての注意看板を確認してから、東大浅間観測所の脇を歩き始めます。
しばらく緩やかな林間コース。この頃はちょうど、紅葉の先頭を切るハゼやウルシの葉がちらほらと色づき始めたくらい。紅葉シーズンはまだ少し先なので、平日だと誰とも出会いません。
20分ほど木漏れ日の林道を進んで汗ばんできたあたりで、右にカーブをきると傾斜がぐっときつくなります。
それまで囲まれていた背の高い森林が突然消え、足元は軽石がゴロゴロするガレ場になり、視界の抜ける前方に、草木もまばらな小山がそびえてきます。
この樹林帯を抜ける唐突な景色の変化がとてもダイナミックで、このコースのひとつの見どころ。
小さい頃ここに来たとき、「火星に来てしまった!」と思ったことを思い出します。
緑の植物は背丈の低いカラマツくらいで、あとはウスユキソウやススキなどの枯れ草ばかり。
遮るものがなくなったので、風がいちだんと強く感じられます。
砂利に足をとられそうになるので踏みしめながら、急な斜面を小山に向かって一歩一歩。
つい下を向いて歩いてしまうのですが、このあたりで振り返ってみれば、浅間の山肌がずどーんとすぐ目の前に!
間近にありすぎて、高いというより平べったく横長に広がって見えてしまうのですが、その迫力はやはり段違い。
ぽっ、ぽっ、と、規則的に湧き上がる噴煙も、すぐ頭上を流れていきます。
向かって右手には、八ヶ岳や南アルプスも見えてきますが、でもまだここではぼんやり眺めてばかりはいられません。
右側は、足を滑らせれば滑落しそうな急斜面。風にあおられて飛ばされそうな帽子を押さえつつ、その先の分岐点へ。
小さな鞍部になった分岐点を右手に進み、ぐるっとさらに登りながら回り込めば、だだっ広く平らな運動場くらいのスペースがあり、真ん中ににぽつんと三角点が。1655mの東峰山頂です。
覆い被さってくるような迫力の浅間山を背に、浅間隠しから妙義、軽井沢の町並み、八ヶ岳方面まで200℃くらいのパノラマがぐるり。
この山頂部分は、石ころだらけでピューピューと風が強いので、分岐点まで戻って休憩することに。窪みになっているので風が避けられ、ざりざりの軽石の地面は、太陽が当たれば岩盤浴のようにお尻をぽかぽか温めてくれます。
おむすびと、まだ温かさが残ってる唐揚げと、熱いお茶で、ひとり山ランチ。
家を出て40分ほど、それも登山らしい道は15分くらいしか歩いていないのに、絶景が広がる1600mを超える場所にいるなんて、不思議な気分と、ちょっとした優越感。
そして相変わらず人っ子ひとりいないので、動くものといえば、風にゆれる枯れ草と、見上げたすぐ先で吐き出されては空を流れていく噴煙だけ。
今ドカーンとやられたら、真っ先にやられるのは私だなあ… と思いながらも、この距離から見る山は遠くから見るよりさらに穏やかに優しげに見えて。
そんな素人感覚がいちばん危ないと笑われてしまいそうですが、怖さよりも、膝枕をしてうたた寝させてもらっているような気持ちよさと安心感に、ほんとうにしばらくウトウトとしてしまいました。
ローソクや暖炉の炎と一緒で、ぽくぽく吹き出る煙も、いつまで見ていても見飽きないのですが、そろそろ正午も回る頃。
休日ではなく、“お昼休憩"(!)だったことを思い出し、30分ほど山時間を楽しんだ後、下山開始。
小浅間には、もうひとつ西側にも頂上があり、そちらからは群馬側の景色がきれいなのですが、この日はすっかりお腹もいっぱいになって満足したのでパス。
小石と砂の下り坂は、踏みしめるというより、半分滑り落ちるように下っていくと早いし楽。
“火星”から、ふたたび緑の森に戻り、道ばたのキノコ観察をしながら元来た林道を抜け、あっという間に下界(というか中腹ですが)。
ドアtoドアで、2時間と少しで帰宅しました。
ほんとうはあの後も、カラマツの紅葉時期にまた行きたかったけれど、なかなかタイミングがままならず。
あの日、ふっと突然思い立って行くことができてよかったなぁと思います。
冬場はあの風がさらに身を切るように冷たいかと思うと、怖じ気づいてしまうけれど、真っ白な浅間をまたあそこから見てみたい思いも。
春以降、北軽井沢に行ってみようと思われたなら、少し早起きをして午前中に小浅間トレッキングを楽しみ、「麦小舎」で下山後のひと休み、帰りがけに軽井沢か草津方面で温泉に寄って… というコースは、いかがでしょう!?
ただ、いくらアクセスがお手軽とはいえ、1500m超えの立派な高山には違いないので、お天気や、気温に適した装備はお忘れなく。
また、浅間山の噴火レベルが、今の「2」から「3」へ引き上げられれば、火口から4km圏内の小浅間にも登れなくなります。
来年もこのまま、パイプをぽくぽく、くらいのご機嫌でいてくれることを願いつつ…。