「寒波」はよく聞くけれど、「暖波」とは言わないのかな。
バレンタインにあわせてやってきたその暖波で、家のまわりの雪はだいぶ融けました。(それでもまだいたるところ白いですが。)
しばらく足を踏み込めずにいた畑や草原もなんとか歩けるくらいまでに。
いっせいに融けたものが、川のように舗装路の上を流れていく、春先のような光景も見られました。
屋根にへばりついていた氷の層も、ずるっと落ちてくれて、それらもろもろはありがたいことなのですが…… 。
やはりいったん緩みを知ってしまったあとの寒さは、体に堪えます。
あの日、一瞬だけ体が軽くなって、掃除をし始めてみたり、楽器を触りたくなったりしたのも、もう嘘のよう。
またハリネズミのように、ギュッと身を縮めて丸まって、できればそのまま動きたくない気分に逆戻り。
そう考えると、人間の体も案外、気候に敏感な動物らしくできているものだなと思います。
それでも気づけばもう2月も半ば過ぎ。この冬もきっと今が正念場。
丸まりそうになる気持ちと体をなんとか引っ張って、そろそろ春に向けた準備も始めていかなくては。
浅間の雪もだいぶ融けて、ところどころ雪形が見えています。
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更新もすっかり怠りがちで、ほんとうに冬眠しているのではと思われてしまいそうですが、実はこの冬、水面下ならぬ雪面下では、ハリネズミなりに少し忙しく活動しています。
まだ詳しいことがお知らせできる段階にはないのですが、できれば春に、この地元・北軽井沢から発信する予定の冊子の編集や取材に携わらせてもらっています。
話が持ち上がったのは、昨年の秋のこと。
そこから、少しずつですが形がまとまり始め、強力なメンバーや助っ人のみなさんの力を借りながら、どうにか発行の兆しが見えてきたところ。
年明けからは、さっそく取材や撮影なども動き始めています。
わたしの担当は、取材をして書くことですが、今回この冊子をつくるにあたっては、あまり「取材」というふうには意識しないようにしています。
とにかく、この土地に暮らす、ごくふつうの人たちの話を聞いてみたい。
本人にしたら「こんななんでもないこと」と思うような語りに、耳を傾けてみたい。
それはここ数年ずっと、何よりもやりたいし、また、今やらなくてはと思い続けてきたことでした。
実際、冬はこんなに厳しいし(昔だったら尚のこと)、どこへ行くにも峠ばかりで不便だし、畑でも作れる作物は限られているし、おまけに時々、すぐ目の前の山はどかんと爆発して灰まみれになったり怖い思いをしたりする。
そんな場所に、どうして暮らしているのですか?
そんな質問は、あらためてこういう機会でもないとぶつけられません。
そしてその答えを知りたいのが、なによりもわたし自身だったりします。
これまでずっと、北軽井沢はどこよりもいいところだ!と公言し、もちろん心の中でもそう思い続けています。
でも「どうして?どこが??」と聞かれたときに、「浅間山が… 」とか、「大自然が… 」と、ありきたりな答えしか出て来ないのが、自分で悔しく思っていました。
ただ山があるからじゃない、ただ自然が豊かだっていうだけじゃない。
もっと、ここにしかない、軽井沢とも、他の里山とも別荘地とも違って、独特の、なんとも言い難い… 、ほら、こう、なんというか、言葉ではうまく言えないんだけど… 、とにかく、魅力が、魅力があるんだーーー!!!
というモヤモヤした心の叫びをずっと抱えたまま。
これは自分一人で抱えていたって、答えなんて見つからないし、いつまでも解決しない。
だったら、とにかく、聞いてまわろう。
わたしなんかより、何十年も、何倍も、この土地のことを知っている人たちに、聞いてみるしかない。
そう思っていたところに、今回のお話。まさに渡りに船でした。
という訳で、これから書こうとしている内容は、「すでに知っていること」ではなく、すべて「これから知ること・聞くこと」です。
その場所での暮らしも10年を過ぎると、自然と、知ったような、わかったようなつもりになっていることも増えてきますが、今回のことを機に、自分も北軽井沢の見え方や感じ方をリセットできるいいチャンスだと考えています。
でも同時に、同じことを移り住んですぐにやってみようと思っても(実際やろうと試みては失敗してきたのですが)難しかっただろうとも思います。
人の繋がりという意味でもそうですが、外からふわっと流れ着いて、見るものすべてがキラキラ輝いて見えたときより、良いところばかりではない、「酸いも甘いも」の“酸い”の部分も多少は知った上でのほうが、よりよく耳を傾けることができるのではないかと。
これで町の何かが変わるなど、大きなことは考えていませんが、「地の人(もともとこの土地の人)」と「風の人(移住者や別荘滞在者など)」との橋渡し役くらいにはなれたらいいなと。
まだまだ海のモノとも山のモノとも知れぬ状況ではありますが、いただいた大切な宿題、楽しみながらがんばってみたいと思います。
大好きなこの一文を胸に。
__物語を語りたい。そこに人が存在するその大地の由来を。__(梨木香歩)
絶好のロケーションにて絶賛撮影中!!