いつもより少し遅れて、GWと同時に小舎びらき。
また、生活の一部に「店」のある日常が始まった。
再開ということに加えて、GW期間はいつも少し緊張する。
夏のお盆休みもそうだけれど、ふだんはのんびり閑散とした村が、突然ちょっぴりリゾート風の(この“風の”というところが肝なのだが、)装いになるからだ。
当然、店にも、都会の匂いをさせたままの人たちがやってくる。
休み明けでまだうまく「店」と「家」との切り替えもできていない上に、よそからの匂いやリズムをまとった人たちに合わせようとするからか、毎年この期間中はどうしたってグッタリしてしまっていた。
だけど今年は、そうでもなかった。
開くまではバタバタだったし、久しぶりの接客で肉体的な疲れはあるにはあったけれど、一度、看板を「OPEN」にひっくり返してからは、顔なじみの人とも初めての方とも、なんとなく流れるままに自然と相対することができた。(お客さんの側からどう見えていたかは別として… 。)
それは、私たちがなにかスキルアップしたとかではなくて、ひとえにお客さんのおかげだったと思う。
常連さんと初めての方が平均して半々くらいの割合だったのだけど、久しぶりのハンバーガー目当ての人も、お茶だけ一杯の人も、それぞれが好きなようにこの場所を使ってくれている感じが、なんともいえずちょうどよく、こちらも気負わずにいられた。
こういうの、「気」というのだろうか。
お店でもなんでも、その場に流れる「気」のようなものは、こちら側だけで作り出せるものではない。
スタート時期や連休中はその歯車が狂いやすいのだけど、今年はすんなり漕ぎ出すことができた。
いつからオープンするのかも、いつ開いているのかもわかりずらい店にも関わらず、ただもう、ありがたいと言うしかない。
そして、思い上がりかもしれないけれど、細々とでも長く続けていれば、こんなふうな良い気や時間が自然と流れてくれるようになるのかもしれないなぁ、とも。
「店づくり」みたいなことで、肩に力が入ったり、うまくいかないと悩んだりぼやいたりしたこともあったけれど、もし今、そんなふうに、思い描く理想と現実との間で思い悩んでいる店主さんがたまたま読んでいてくれるなら!
週末だけの期間限定の店のくせに偉そうにと怒られるかもしれないが、「だいじょうぶ。時間がうまいことやってくれます!」とだけは言わせてほしい。
ちょうど今、春の花がいっせいに咲き始めて、庭づくりにも夢中になっているので、それとも重なるのだけど、人間が小手先でやることは、自然の流れや時間にはどうしたってかなわない。
もちろん、店も庭も、心地よくするためにちょこちょこ手入れはしないといけないけれど、大きな部分では時間に委ねるくらいがちょうどいいんだろう。というかむしろ、そうしかできないんだなあ。
と、はじまりの一週間が過ぎて、今ぼんやりと考えているところ。
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営業日の中休みには、今年初の山登りへ。
いや、ほんとは山登りのつもりじゃなくて、オットが今、仕事で入っている現場をドライブがてらちょっと覗きに行くという話だったのだけど、これが、散歩もハイキングも越えて、しっかり山登りだった。
長野原町の隣り、六合村(くにむら)の入山地区。この辺りは戦前で時間がとまっているようなディープな界隈なのだけど、その最奥から、長野と新潟との県境近くにある大高山を目指すコース。
一応、登山道として道はついているが、標識の看板も朽ち落ちて、近頃はほとんど歩く人もいない様子。林道が終わると、いきなり胸突き八丁の急登になり、容赦なく連続する。
あえぎながら登る道の両脇にところどころ赤いテープが結びつけられていて、これがオットや職場の人が付けた、これから伐採するためのエリアを示す印。
この急坂(それもクマザサに覆われた薮のなかの斜面)を、日に何度も往復するらしい。
途中、視界が開けると、草津の町から草津白根山、ロープウェイのある横手山頂までの稜線を、東側から一望できた。
大高山の山頂まで行くには、天候も私の体力も持たなそうだったため、途中でお湯をわかしてラーメンを食べて引き返す。それでも片道2時間で標高差500m以上登った。下りきったときには脚は棒のよう。
ふだんの日中、私がパソコンを前にもにゃもにゃと指先だけ動かしている間に、このひとはこんな場所でケモノのように山中を這い回っているのか… と思ったら、尊敬もするし、ちょっと知らないひとを見てるかのような気持ちにもなった。
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GW中は雪の舞う寒い日も台風のような風の日もあったけれど、全体としては晴れて暖かい日が多かったので、この一週間だけで春がぐんぐん進んだ。
透き通るような若葉の緑が、だんだん濃く、しっかりとした緑に変わっていく。
2〜3日前、特に気温の高かった日には、もうエゾハルゼミが鳴き出した。
カッコウより早く鳴いたのは初めてのような気がするけれど。
今は、そのカッコウ待ち。
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最後にお知らせ。
今週末の14〜15日の週末は、恒例の「敷島。本の森〜ブックマルシェ」が前橋・敷島公園で!
「キジブックス」は、15日(日)のみお邪魔します。
この時期、あの松林に流れる時間は、それこそえも言われぬ心地よさ。
今回も魅力的な本屋さん大集合に加えて、作家・絲山秋子さんの出店やライブがあったり、スイス在住デザイナー、葵・フーバー・河野さんのトークショーもあるとか!
どうぞお出かけください。
「敷島。本の森」ブックマルシェ 2016
日時:5月14日(土)・15日(日) 11:00am - 夕方
場所:敷島公園 黒松林(上毛新聞敷島球場北側)
「敷島。本の森」ブックマルシェ Facebook
「suiran」(主催のフリッツアートセンター土屋くんブログ)