みなさん、「小鹿田焼」という焼き物をご存知ですか。
小鹿田と書いて「おんた」と読みます。
大分県日田市、その名も「皿山」と呼ばれる地方に、江戸時代中期から今に至る300余年の間、古くからの技法を丁寧に守りながら焼き続けられてきている窯場だそうです。
特徴としては、派手な色彩を用いず、白土をかぶせた無地のものの他、「飛びかんな」「刷毛目」「櫛かき」といった技法で、いくつかのパターンの模様が描かれます。(→
技法の参考)
実際、見てもわかる通り、一見して華やかさがある訳でもなく、どちらかといえば庶民の日用使いの器として使用されてきたところを、昭和初期、民藝運動の指導者・柳宗悦により見いだされ、その後も、イギリスの陶芸家で日本を深く愛したバーナード・リーチが広く紹介し、一躍脚光を浴びる事となりました。
はじめてこの器を見たのがどこだったのかは忘れてしまいましたが、その時も「あ、好み」と思いつつ、実は日本の物ではなく、北欧かヨーロッパの国の陶芸の種類かと思っていました。
白とこげ茶という配色に、最小限の線の模様だけ、というシンプルでミニマムなデザインが、いかにも北欧っぽいテイストに見えたので。
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今回、この「小鹿田焼」に再会することとなったのが、お友達に紹介され、訪ねてみた二子玉川の裏路地にある「
kohoro」というお店。
その佇まいから「お、ヤバいな」と感じたのですが、店内に足を踏み入れ、ヤバい予感は的中。
最近、どちらかというと「シブ好み」となってきている私のアンテナが、高速で回転を始めるのがわかりました!
数としてはそう多くはない商品のひとつひとつが、しっかりそれぞれの主張を持ってそこに存在し、選ばれて陳列されていることに誇りをもっているかのよう。
なかのひとつのショーケースに、「小鹿田焼」の平皿(5寸から4種類くらい)、どんぶり、湯呑み、すり鉢などが鎮座。
「ちょうど窯だしがあって、お店に届いたところなんです」と店員さんが教えてくれた通り、ここまでの種類と数が揃っているのは初めて見ました。
器を選ぶ時にいつも考えるのは、そこに盛られた料理がイメージできるかどうか、ということ。
「小さめの平皿にはシンプルなガトーショコラが似合いそう」
「小どんぶりは、ご飯の消費量が半端でない相方用にして、つやつやのお米が映えそう」
こんな妄想がムクムクと湧いて来たら、もう「アウト!」です。
ひとまずは、トップに紹介した小どんぶりを相方へのお土産としただけに留めましたが、あらためて電話等でも注文できることを確認し、お皿のサイズや価格をしっかりとメモしてきたことは言うまでもありません。
この焼き物のもうひとつ嬉しい魅力は、その価格。小さなお皿なら5〜600円くらいから。
もともとが「実用」を第一に考えて作られてきているだけに、毎日の生活に気兼ねなく使える価格に抑えられているのです。
現代の若手の作家さんの焼くものの中にも、美しいけれど到底手が出ないし、買えたとしても怖くて普段使いなんかできません...というモノにもよく出会うけれど、本来、焼き物とは「作品」ではなく、家庭の食卓の上に乗ってこそ、その本領が発揮されるものだよなぁ、ということを、あらためてこの「小鹿田焼」が教えてくれた気がします。
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「小鹿田焼」の特長を、柳宗悦は著書「手仕事の日本」の中で、こう書いています。
『こういう品物を台所なり食卓なりに置くと、花を活けているのと等しいでありましょう。』
これぞまさに「用の美」。日本の民藝の底力に触れたような思いです。
いずれ、「麦小舎」カフェのテーブル上で紹介できたら嬉しいのですが...☆
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興味を持たれた方へ。参考までに。
『
小鹿田焼_すこやかな民陶の美』長田明彦他・著(芸艸堂)
『
手仕事の日本』柳宗悦・著(岩波文庫)