以前から、どうしても我が家の庭に欲しかった木を、念願叶って植えることができた。
夏ツバキ。別名、シャラともいう。
東京にいた頃、意識して見た憶えがあまりないのだけれど、こちらに来て、一昨年も、去年も、いよいよ夏のシーズンが始まり出すという眩しい日射しのもと、こぶしほどの白い可憐な花をいっぱいにつけるこの樹を見かけるたびに、ほしい、ほしい、と思っていた。
(キッカケは
軽井沢のこのカフェのお庭だったかな。
こちらではいつも、クレマチスやヤマブキ、べリー類など、私の憧れる白い可愛らしい花を、毎年上手に咲かせていて、とても羨ましい。
「上手に咲かせるコツは?」と尋ねても、「きれいに咲いてね、と言いながらほっといているだけだよ」とはぐらかされてしまったけれど、きっとこまめに手入れをされているのだろう。)
北軽井沢でも、ちらほら植えている方を見るので、厳寒地がまったくダメだということもないようだ。
相方を通じて、お仕事でもお世話になることのある庭師(ではなく、なんというんだったっけ?)のNさんに、思いきって調達を頼んでみた。
Nさんの選んでくるモノは、いつも一級の上物だという評判。
草木ばかりは、本当に信頼できるところからでないと、その後のことがどうしても心配。そこはやっぱり素人では見抜けない。
なにせこの厳しい環境の土地柄、植えればなんでも育ってくれるという訳でもない。それでいくつも失敗した例がある。
小雨の降る早朝。玄関先に、地下足袋を履き、小脇に樹を抱えたNさんが、立っていた。
小脇に...といっても、すでに背丈の2倍ほどもある立派な樹だ。
(なぜか、オマケに、と言って、根っこにミョウガが付いていた。)
値段もだいぶ抑えてくれたため、植えるのは自分たちで。
庭のほぼど真ん中、周りを囲む大樹で遮られる陽光が、唯一もっとも最長時間照らされるとっておきの場所を選び、深く深く地面を掘る。
ふたりで「よいしょっ」と株元を支えながら、植えこんだ。
一応、これから始まる新しいコトを記念しての想いを込めた、植樹。
ふたりで、ぱちぱちぱち、と拍手をし、記念撮影をし合う(笑)。
どうか、うまくこの土地に根付いてくれるように。
深く、広く、根を拡げ、ここで繰り広げられる(であろう?)ささやかな人々の交流を、いつまでも見守ってくれるように。

雨のやんだ翌日、古参の者たちに良い場所を独占されたことを嫉妬の目で見られながら、早速、陽の光をいっぱいに浴びてたつ夏ツバキ。
花がつく来年の夏が、待ち遠しい。