南方より戻りました。
両親の暮らす伊豆半島の東側。
たかだか県をふたつまたぐほどの道程も、在来線で関東平野をぐるりと巡れば片道5時間強。
ねずみ色の工場と枯れた畑をぼんやり眺める高崎線(湘南新宿ライン)は、年の瀬の賑わいに沸く華やかな山の手の縁をかすって、ふたたび無彩色の住宅地を縫って、潮の香りのする方へ。
大きな荷物をひきずる人たちと一緒に、それぞれの旅館の旗を手に満艦飾のハッピをまとったおじさんたちが出迎える駅に降り立つと、空気はぼんやりと生温く、海から一気にせりあがる山は秋さえ訪れていないような濃い緑。季節を3ヶ月以上巻き戻したような気分にくらっとする。
自分たちの山暮らしとほぼ時を同じくして始まった両親の海暮らしの家も、手仕事好きな父の細工もそこここに、薪ストーブも加わって、訪れるごとに良い意味で生活臭が増している。
珍しく風のないのったりと穏やかな海。その向こうにぼんやりと浮かぶ大島。たわわに実る黄や橙のみかんの実。
庭には水仙、近所を歩けば黄色のロウバイもちらほらと...。早くも春うららの風情に、しばし氷点下の(どうやら私の留守中には、お風呂の残り湯すら凍ったという)我が住処のことは忘れることに....。
刺身に焼き蟹、年越し蕎麦、おせちにお雑煮、すき焼き。(ここぞとばかりに遠慮なく。)
ビール、日本酒、イタリアの発泡ワイン、お神酒。(比較的、控えめ。)
紅白、お笑い、アイススケートショウ、ニューイヤーコンサート、駅伝、サッカー。(格闘技は見ません。)
食べて、呑んで、ぼんやり見て、笑って。(プラス自宅の温泉♪)
除夜の鐘を聞くまでは、あれしろこれしろと慌てふためいて、年が明ければぽっかりと昼間っから呑んで笑ってグダグダが許される。
日本のお正月って、面白い。
お裾分けのお節を手土産に、今度は海を右手に同じ道をゆらゆら揺られて戻ってみれば、鼻から肺まで突き抜ける冷たい空気に、うららな余韻は見たか見ないかの初夢とともに、一瞬にして消えました。
年越しの夜通しイベントを終え、明けて早々憔悴気味の相方と、その間、氷の家に留守番だった不憫な麦に、新年の挨拶をして、あらためてお節と即席雑煮でささやかな祝い膳。
小舎暮らしも、まもなく丸3年。
今年もこのメンツで、肩を寄せ合い、のらりくらりとやっていきましょう。
皆様も、どうぞよろしくお付合いくださいませ。
*道中、年をまたいで読んでいたのは、石田千「屋上がえり」。
*食べる、寝る、以外は、颯爽と野山に出かける、すっかり精悍で逞しくなっていたかつての愛猫。
*何年ぶりかで拝んだ初日の出。そういや後厄も抜けたことだし、おっと、こいつぁ縁起がいいねぇ。