昨日の夜、
緑色にライトアップされた東京タワーを見ましたか?
3月17日は、アイルランドの国民の休日「セント・パトリックス・デイ」。
守護聖人・聖パトリックの命日であり、春の訪れを祝う国をあげてのお祭り。
今年はアイルランドと日本の国交樹立50周年にあたることもあり、日本でも色々とイベントが行われているよう。(今日、日曜日には、
表参道でパレードもあったとか。)
グリーンは、「エメラルドの島」と呼ばれるアイルランドを代表するカラー。
このお祭りでは、グリーンの衣装や、国花でもあるクローバーに似たシャムロックをモチーフとしたものを身につけ、みんなでパレードを行う。
きっと、アイリッシュのミュージックも演奏されて、唄ったり、踊ったり、陽気に楽しむのだろう。
残念ながら、私が彼の地にゆくのは、ちょうどお祭り直後の時期となってしまった。
アイルランドの暦にまつわるものとして、もうひとつ印象深く憶えているのが、2月1日「燈火節」。
英語では「Candle Mass」。聖母マリアが大天使ガブリエルから受胎告知を受けたとされるキリスト教のお祭りですが、元はケルトの火と豊穣の女神ブリジットを祝う日だった。
私がこのことを知ったのは、その名がタイトルとなっているこの本を読んでから。
『燈火節』片山廣子/松村みね子(月曜社)。
以前にも書いたかもしれないが、この本は、私の「生涯大切に読みたい本ベスト5」に入るであろう美しい本。
明治生まれの著者の、言葉も、物を見つめる姿勢も、おそらく生き方そのものも、どれも凛として美しい。(ちなみに2つの名前は一人のもの。)
軽井沢を舞台にした、堀辰雄や芥川龍之介らとの交友からその名を知った著者に関して、なぜだか強く興味を惹かれ、その後、幸運にも絶版となっていたこの本が復刊された。
歌人であり、同時にアイルランド文学の翻訳家として知られる彼女は、実際にとても聡明なひとだったようで、芥川龍之介も彼女に心を寄せていたという。
私にとっては、この美しい随筆集が、それまでもやもやとしていたアイルランドという国への憧れを、はっきり決定づけるものになった。
この本の冒頭に記されている、ケルトの古い言い伝え。
はじめに生れたのは歓びの霊である、この新しい年をよろこべ!
1月 霊はまだ目がさめぬ
2月 虹を織る
3月 雨のなかに微笑する
4月 白と緑の衣を着る
5月 世界の青春
6月 荘厳....
「虹を織る」月、なんて... なんて素敵な言い回しだろう!
私が訪ねるのは、ちょうど「雨のなかに微笑し」ながら「白と緑の衣を着る」頃。
アイルランドは、暖流の影響で、春も早く訪れるという。
きっと、野性の水仙やハリエニシダの花が咲き出す頃だろう。
旅もいよいよカウントダウン。
でも、まだ実感が沸いてこない。