どうしても見てみたい展示があり、高崎へ出かけました。

高崎哲学堂にて開催中の「ウェグナーに座ろう」展です。
その名の通り、デンマークの家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーの椅子たちが一同に集められ、自由に座って、感触を確かめたり寛いだりすることができます。
なにより心惹かれてしまったのが、会場となっている「高崎哲学堂」の建物。
軽井沢ともゆかりの深い建築家、アントニン・レイモンドの自邸を模して昭和20年代に作られたという家は、一見、変哲のないありふれた平屋の日本家屋のような造り。
でも中まで足を踏み入れると、梁や建具、小屋裏の木の組み方など、日本の伝統にはない意匠があちこちに。
ガラスをはめ込んだ引き戸とか、障子とガラスを組み合わせた窓とか、とても素敵。
驚くのは、内壁がベニヤを打ちっぱなしにしただけということ。安っぽくならずに、和と洋とあいのこみたいな空間にうまく馴染んでいる。(相方は今後の増築のためにフムフムとメモる。)
余計な装飾なんて一切無いストイックな建物。竹林のある庭がどこからも見えていて。
なんて気持ちのよい場所!
周りは無機質なコンクリートのビルに囲まれているのに、ここだけぽっかりと時間がとまったみたい。
そんななかで、訪れた人は思い思いに気に入った椅子に座り、お喋りしたり、居眠りしたり。
瀟洒な美術館やギャラリーに飾られているより、椅子たちも(実際に個人が使用されているものが多いというのもあるけれど、)自然にその場に馴染んで、本来の役割(「作品」とかじゃなくて「日用品」であること)を喜んでいるように見える。
そうして実際にかけてみるウェグナーの椅子は、背にあたる部分がすんなり体に沿って、疲れない。ああ、こういうことかーと思う。
家と、家具と、それを使うひととの、本来当たり前なはずの幸せな関係。名前とか、ブランド性とか、理論とかじゃなくて。
縁側でお茶をするように、表の椅子に座って珈琲やお菓子もいただけます。
珈琲を煎れるのは、今はなき高崎の「リトルラックコーヒー」のNさん。自ら考案の「
ドーナツドリッパー」で丁寧におとしてくれます。
二言三言お話できたNさんは、私の勝手な想像を覆すような物腰の穏やかな謙虚な方。(もうちょっとツンツンした感じかなーと思ってしまっていました...)
Nさんをはじめとする「高崎デザイナーズアクト」の皆さん。この企画を皮切りに、グイグイ面白いことを牽引してくれそうで、楽しみ。同じ群馬の者として勝手に嬉しくなります。
「ウェグナーに座ろう」は、残り1週間。お近くの方はぜひ、あの心地よい空間を体感してください!(なくなってしまってほしくないなぁ...)

「
ウェグナーに座ろう」
2007年10月6日〜28日
11:00〜18:00(金・土は20:00まで)
高崎哲学堂
会期中無休
■お隣の「
高崎市美術館」で開催中の彫刻家、三沢厚彦さんの『ANIMALS+』もオススメ!
あの独特の表情の動物たちにずらりと囲まれます。
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そのほかの高崎寄り道店のご紹介。
雑貨と器の『
SABI』さんでは、タイ産のガラスのコップとスプーン、まだ手にしていなかったリトルプレスの最新号など。
高崎に行ったら必ず覗く雑貨屋さん。小さなスペースに「つい欲しくなっちゃうモノ」がぎっしり。ここでお財布を気にせず散財することが目下の夢...です、笑。
今回は思い切ってお店の方にもご挨拶。(前回はタイムリーに「カフェと音楽と、」のCDがかかっていて、逆に名乗れなかった...)
車をびゅんと渋川方面に走らせて、大型SC近くの新しい道沿いにある『
tonbi coffee』へ。
こちらも以前からサイトを覗きつつ訪ねてみたかったお店。(京都の恵文社さんで「高崎メイド」のコーヒーが扱われているのを知った時はビックリしてしまった。)
こじんまりとした清潔な空間に漂うコーヒーのよい香り。高崎にて、本日2杯目。
1杯1杯、丁寧にじっくり時間をかけていれてくれるコーヒーは、お茶を点ててもらっているような贅沢な気持ちにさせてくれました。
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峠を下って1時間のお隣の街、高崎で出会った、珈琲や美しいモノと、心地よい場所を生み出すヒトたち。
ゆったりとした時間と、ぴりっとした刺激をもらって、山へ戻りました。
(地方都市の面白さ、捨てたもんじゃないんです。)