年越しにかけて読んでいたのは、「向田邦子全対談集」(世界文化社)。
対談集を読んだのは初めて。古本やさんで見つけた。昭和57年の発刊。今は絶版。
対談の相手は同業の作家や脚本家、俳優、お相撲の親方まで。
様々な掲載誌からの寄せ集めだが、ちょうど訃報の直後にまとめられたものなので、それぞれの方からのメッセージが後から章末に加えられている。
脚本以外のエッセイや小説もさることながら、向田さんが対談の名手であったことを知る。
思ったままを奔放に口にしながら(谷川俊太郎に対して「詩人なんて全然わからない!」と言いきっちゃう!)、相手の話したい事を絶妙に引き出そうとする。
みんなに愛されるキャラクターだから、逆に質問責めにあい、聞き手なのにずいぶん自分のことを話したりするけれど、またスッと相手に譲る。
「間」が上手な人だと思う。人間観察が商売のもとにあるのだから当然かもしれない。
なかでも面白かったのが、親友・澤地久枝とのおしゃべり。一見、女同士のお茶のみ話のように突っつきあったり、でもお互いを知り尽くしているからこそ逆に踏み込みすぎないようにしたり、あけすけなようで全部は見せない。読者にはちょっと意地悪な。でもこんな関係が羨ましい。もちろん単なる「仲良し」ではこうは行かない。お互いを「戦友」として認め合っているからこそなせる技。
人に会って、お話を聞き出すことは、比較的得意なほうだと思っていたのに、全然ダメだと思うことが去年の後半に結構あった。
ダメだなと思ってしまってからは、どんどん苦手意識が出て来てしまって、話せば話すほどダメだった。
相手の方が、いったい何を答えたらいいんだろうと途方に暮れている。
自分自身も何を語ってほしいのかわからずに投げかけてしまっているから、それも当然のこと。お互いに困る。焦る。落ち込む。
インタビューには、事前の準備もかなり重要だけれど、限られた時間にどれだけ魅力的な話を引き出せるかは、最終的には「反射神経」しかない。
これはスポーツと同じで、普段からトレーニングをしておかなければ磨かれない。(天性のセンスも大部分を占めそうだけれど。)
向田さんの「反射神経」は、案の定、オリンピック選手並みだ。
あの人は、非凡なセンスの持ち主というよりも、好奇心プラス努力の人だという気がする。
平凡な私が惹かれる理由はそこにあるんだろう。
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毎年、お正月には、TBSでやっていた新春特番の向田さん脚本ドラマが大の楽しみだった。
当時(毎年やっていたのは今から10年くらい前かしら)は向田さんのこともよく知らず、毎回のストーリーも戦後の家族の日常の話で、お父さんがいなくて、お母さんが加藤治子で、娘役が田中裕子で、ワケアリの男として小林薫が出て来て、ナレーションが黒柳徹子で...。
普通の家族の日常と、その裏で一人一人が抱えている秘密と。
今ではお話がすべてごっちゃになって記憶しているけれど、(後から本で読み返してちゃんとわかったのもありますが、)派手なトレンディドラマが好きな一方で、地味なのになぜか惹かれて、お正月には家族にも宣言して欠かさず観ていた。
今もときどき、ふとした拍子に、小林亜星が作曲したあのワルツ調のテーマ曲がよみがえって、懐かしいような切ないような思いになる。
またあれを再放送してくれないかな。
と思って調べてみたら、ちゃんとDVD化されていて、数枚セット15000円くらいするのが何巻も出ているらしい!
すぐには手が出ないけど、いつかは揃えてみたい。。
夢中になって本を読んでいるとあっという間に夕暮れ。
年が明けて、ここのところ、こころなしか日が長くなってきたような...。