生まれて初めて、野生のクマを間近に見ました。
カモシカに続き、クマ??
いえいえ、さすがに森の中でばったりというのではありません。
オシゴトの関係で、檻に捕獲されたクマに、麻酔をかけ、身体検査(?)をし、追跡用の発信器をつけ、また森に返してあげる場面に立ち会うことができたのです。
軽井沢では近年、ツキノワグマの出没が相次ぎ、野生動植物を管理・保護する「ピッキオ」という団体のスタッフが、町からの委託も受けて、捕獲調査や追い払い、また、やむを得ない場合(人間に危害が加えられる怖れのある場合)は駆除(滅多にない例ですが)する、という活動を続けています。
昨年から、機会があれば、かれらの活動についてちょこちょこと取材をさせてもらっていたのですが、実際クマの捕獲現場に立ち会ったのは、初めてのこと。
私用のページにつき、詳しい内容は控えますが、目の前で、まだ生まれてそう年のたたない小熊が、麻酔をかけられグゥグゥと気持ち良さそうにいびきをかいている数十分間に、ピッキオの専門のスタッフたちが、てきぱきと必要な検査や処置を行っていきます。
なにかの手違いで麻酔が完全に効かなかったりした場合など、危険をともなう作業には違いないのですが、思ったより、その場は和やかなものでした。
スタッフにとっては、すでに慣れた作業であることもあるのでしょう。
それにしても、東京に暮らしていたら、動物園でない場所でクマに会うなどということは、想像もしないことです。
私も、これまで何度も紙の上では「クマとの共生が云々」と書いてはきましたが、やはり実際に目にしてみて、軽井沢の森に棲むこの子の家族や親戚やイトコやマタイトコのクマたち、この子の数倍も大きくて、私なんて一発のパンチで簡単にすっとんじゃう迫力あるクマたちの存在を想像すると、恐ろしいような、でもそれでいて何か崇高な神秘的なような、複雑な気分になります。
もちろん生き物同士、みんな仲良し〜♪というムツゴロウさん的発想で解決できるものでもありません。
かといって、山に山菜を採りにいったおじいさんが襲われて大ケガを負ったからといって、では皆殺しにいたしましょう、というのも人間の勝手すぎる。
人間も、クマも、(その他の森に棲む野生動物も、)お互いになるべく傷を負わずに済むように、と、ここ軽井沢ではピッキオのメンバーが地道な努力をしています。
そして、日常「ヒト」以外の生き物に多く触れているかれらは、いつもまっすぐでキレイな眼をしているのです。
(専門分野を突き進む必殺仕事人・職人系に弱く、すぐに影響を受け過ぎてしまうのが、私の悪いクセですが。)
クマをはじめ野生動物について、特別な知識も、とりたてて深い愛着心も持ってこなかった私ですが、クマからの連想で、しばらくぶりに星野道夫の本でも開いてみようかと思います。